「新種創造」

(再公開 2017/05/23)
○ 深い森の入口
教授と助手がリュックを背負い、網(あみ)を持って立っていた。
助手「(不安気に)ほんとに行くんですか?」
教授「当たり前だ。あのゴキブリ野郎に負けてたまるか」
助手「でも、新種の昆虫がそう簡単に見つかるはずありませんよ」
教授「何を言うか。そもそも、私の方が先だったんだ。あの昆虫を発見したのは」
助手「そうかもしれませんが、横島(よこしま)教授が先に発表してしまったんですし」
教授「横島! あいつは、いつもそうだ。私の邪魔(じゃま)ばかりしやがって」
助手「教授、大丈夫ですか。あんまり興奮(こうふん)すると」
教授「行くぞ。この森の中には必ず新種の昆虫がいるはずだ。私に捕まるのを待ってる」
助手「はあ。でも…」
教授「心配するな。ここはホットスポットなんだ。新種の昆虫の宝庫さ」
教授を先頭に森へ分け入る。道なき道を進んでいく。
○ 古びた建物の前
森の中に突然現れた建物。二人は驚いて建物に近づいて行く。
教授「なぜだ。なぜこんなところに、こんなものが」
助手「人が住んでるんでしょうか? もしかしたら、廃墟(はいきょ)かもしれませんよ」
建物の入口の戸が、音をたてて開く。中から老人が顔を出した。
老人「何か用かね? こんなとこへ来るんだ。お前たちの目的はあれだろ」
助手「あの、僕たちは、その、昆虫を探して…」
老人「だったら入りな。ここには、お前たちの欲しがってるものがあるぞ」
老人は、二人を中へ招き入れた。二人は、恐る恐る入って行く。
○ 実験室
実験器具などが並べられている部屋。昆虫が入っているケースも並んでいる。
教授「(ケースの中の昆虫を見て)これは…。まさか、こんなところに」
老人「さすが、お目が高い。そいつは、つい最近発見された新種さ」
教授「信じられない。まだ、一匹しか見つかっていないはずだ」
助手「教授! これを見て下さい。これって、横島教授が発見したやつですよ」
教授「どれだ。(駆け寄り見つめる)うーん。間違いない。これは私が発見したやつだ」
老人「ほう。横島を知ってるのか? あいつは、金払いが悪くてな」
教授「(老人に詰め寄り)どういうことだ。あんたはいったい、何者なんだ」
老人「そんなことより、これなんかどうかね。(ケースの一つを見せて)この、何ともいえない色と輝き。フォルムも最高のできばえさ」
教授は、その昆虫に魅了(みりょう)されてしまう。
老人「百万でどうだ。こいつの発見者になれるんだ。けして高くはないと思うが」
教授「これは、素晴らしい。こんな昆虫がいたなんて…。分かった。払おう。絶対に他の奴に渡さないでくれ。これは、私の昆虫だ。ハハハハハハハ」
<つぶやき>まねしないで下さい。自然の摂理(せつり)に逆らったら、どんなしっぺ返しが来るか。
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2012年12月14日