超短編戯曲

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超短編戯曲

「月夜見さま」

(再公開 2017/03/20)
 ○ 良太(りょうた)の部屋・夜
部屋の窓から月を見ている良太。突然、目の前に顔が現れて腰を抜かす。
良太「うわーっ!」
窓から女の子が入ってくる。良太、唖然(あぜん)とする。女の子、部屋の中を見回して。
月夜見「へえ、こんな狭いところに住んでるんだ」
良太「き、君は誰だ? どうやって…」
月夜見「あたし、月夜見(つくよみ)よ。あなた、あたしのことずっと見てたでしょ」
良太「えっ? 俺は、君なんて知らないよ」
月夜見「もう、あたしに見とれてたじゃない。だから、あたし来たのよ」
良太「だから、知らないって言ってるだろ。帰ってくれよ」
月夜見「イヤよ。あたし、帰らない。しばらく、ここにいることにするわ」
良太「冗談じゃないよ。そんなこと…」
月夜見「ねえ、お腹(なか)空いちゃった。何か食べさせてよ」
 ○ 良太の部屋・数日後の夜
良太と月夜見が帰ってくる。月夜見は楽しそうにはしゃいでいる。
月夜見「今日は楽しかったわ。ありがとうね、良太」
良太「いや、そんな…」
良太は財布を見る。中には小銭しか入っていない。
良太「なあ、そろそろ帰ってくれないか。俺もこれ以上学校休むと、マジやばいんだよ」
月夜見「学校?」
良太「だから、大学だよ。それに、バイトもしないといけないし」
月夜見「バイト?」
良太「もう、ピンチなんだよね。君が、すっごく食べるもんだから。そんな華奢(きゃしゃ)な身体して、どこに入ってくんだよ。店の人だって、驚いてたじゃないか」
月夜見「そお? これでも減らしてるんだけどなぁ。じゃあ、明日は…」
良太「だから、もう金(かね)がないんだよ。明日、食べるものなんてないんだ」
月夜見「なんだ。お金がないの? じゃあ、あたしが何とかしてあげる」
良太「えっ? 金、持ってるのかよ」
月夜見、窓から月を見上げて、
月夜見「あそこの、クレーターをあなたにあげるわ。自由に使っていいのよ」
良太「えっ、クレーターって?」
月夜見「月の中でも一番大きなやつよ。それと、その隣の平らなとこもつけてあげる」
良太「だから、そんなのもらっても…。どうしろって言うんだよ」
月夜見「そうだ。これから行かない? あたし、案内してあげるよ」
良太「行くって、どこへ?」
月夜見「(月を指さし)あそこよ。あたし、月の神様だもん」
<つぶやき>月を見つめすぎないで。月夜見さまがあなたの所へも現れるかもしれません。
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2012年09月10日

「あなたのこと嫌いです」

(再公開 2017/03/29)
ある大学のラウンジ。ユリカが沈んだ顔をして座っていた。そこへ香里(かおり)がやって来る。
香里「(ユリカの前に座り)ビシッと言ってやったからね。あなたのことは嫌いです。二度と顔も見たくない。もう私の前に顔を出さないでって」
ユリカ「えっ、私そんなこと言ってないでしょ。もう、何でよ」
香里「何でって。あなたが言えって言ったのよ。だから、あたし…」
ユリカ「私、嫌いとか、顔も見たくないなんて言ってないでしょ」
香里「ああ、それは、つい出ちゃったのよ。仕方ないじゃない。勢いってやつよ」
ユリカ「勢いって…。私は、もっと普通にしようって……。で、何か言ってた?」
香里「別に、何も」
ユリカ「何もってことはないでしょ。だって、だって…」
香里「そんなに気になるんだったら、本人に訊けばいいじゃない」
ユリカ「本人って…。もう、あの人と一緒にいると、落ち着かないのよ」
香里「まったく、何でそんなに喧嘩(けんか)ばっかするのかなぁ。あたしには理解できないわ」
ユリカ「知らないわよ。向こうからふっかけてくるんだから」
香里「あんたたち、ほんと似たもの同士ね。寂しがり屋のくせに、意地っ張りで。自分の思ってることを素直に言えないんだから」
ユリカ「そんなことない。あの人と一緒にしないで」
香里「おかげで、あたしは二人にいいように使われて。何でこんなめんどくさいこと」
ユリカ「ごめん。だって、香里しか頼める人いないから」
香里「どうせ、あたしは共通の友人ですよ。でもね、それも今日で終わりにするからね」
ユリカ「えっ? それ、どういう…」
そこへ智也(ともや)がやって来る。ユリカがいるので驚いて立ち止まる。
香里「もう、何やってるのよ。早く来なさいよ」
智也「(気まずそうに来て、座る。香里に)これ、どういう…」
香里「二人で、ゆっくり話し合ってもらおうと思って」
ユリカ智也「何で?」
香里「だから、お互いに言いたいことがあるよね。あるはずよ」
ユリカ「な、ないわよ。そんなの…」
香里「ユリカ。言っちゃいなさい。スッキリするわよ。さあ」
ユリカ「えっ、ここで…」
香里「智也も、あるんでしょ。自分の思いをぶちまけちゃいなさいよ」
智也「えっ。それは…」
香里「もう、めんどくさいなぁ。じゃ、あたしが代わりに言ってあげるよ。ユリカは智也のことが大好きです。智也もユリカのことが好きだーぁ」
二人、唖然として見つめ合う。
香里「ほら、立って。(二人を立たせる)ハグしなさい。いいから、しなさいよ。(二人、ぎこちなく抱き合う)これで良し。今度喧嘩したら、あたしが許さないからね」
<つぶやき>香里さんもこれでひと安心です。やっと、自分の彼氏捜しに専念できますね。
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2012年09月22日

「雲のように」

(再公開 2017/04/07)
街を見渡せる丘の上にある公園。ベンチに座る二人。無言で空を見ている。青い空に白い雲がいくつも浮かび、その中の一つが形を変えて二つに分かれようとしていた。
「ねえ、私たちも、あの雲みたいに、きれいに別れられたらいいのにね」
「……。別れよう。俺たち、その方がいいと思うんだ」
男は離婚届を女に渡す。すでに男は記入をすませ、印鑑も押されている。女は顔色も変えず、離婚届をしばらく見つめる。そして、男の方を向くとにっこり微笑んで、
「いやよ。(離婚届をゆっくり破りながら)私は、別れる気なんてないわ」
「なぜだ。もう、俺たちには愛情なんて…」
「私は、あなたのこと好きよ。愛してるわ」
「嘘だ。君は他に…。俺が知らないとでも思ってるのか?」
「そう言えば、ここだったわよね。あなたが私にプロポーズしたの」
「男がいるんだろ。その男と、食事をしたり、買い物に行ったり。俺は、ちゃんと…」
「あなた、ここで始めてキスしてくれて。(恥ずかしそうに微笑んで)私、嬉しくって」
「俺の話を聞けよ。いつから浮気してたんだ」
「私、浮気なんてしてないわ。あの人たちは、ただのお友だちよ」
「あの人たち? えっ、ヒゲの男だけじゃないのか。他にも…」
「ねえ、あなた。今日は、どこかでお食事でもしない? 久しぶりに」
「何言ってんだよ。俺たち、別れ話をしてるんだぞ。よくそんなこと…」
女、男の手を取り、やさしく微笑む。男は、困惑の色を隠せない。
「ね、いいでしょ?(何かを思いついて)そうだ。あのお店に行ってみない?」
「えっ? ……」
「ほら、私たちがデートの最後にいつも行ってた、あのお店よ。まだ、あるかしら?」
「そんなことより。俺と別れてくれ。俺は別れたいんだ」
女、しばらく男の顔を見つめている。いつになく真剣な男の顔。
「(空を見上げて)あっ、さっきの雲、消えちゃったね。どこ行ったんだろ?」
しばしの沈黙。女はいつまでも空を見ていた。男は立ち上がり行こうとする。
「(空を見上げたまま)いいわよ。別れてあげる」
「(振り返り)ほんとか? ほんとに別れてくれるのか?」
「(男の顔を見ないで)ええ。私たちも、きれいに別れましょ」
「ありがとう。じゃ、離婚届を書いて…」
「いいわ。(カバンから離婚届を出して)ここに、書いておいたから」
女はベンチに離婚届を置く。男はそれを受け取り、頭をさげて、
「悪いな。これで、さよならだ。元気でな」
「(また空を見上げて)ええ。あなたも…。今度の人は、ちゃんと幸せにしてあげて」
男、驚いて足が止まる。女の方を見るが、何も言わずに行ってしまう。女は空を見上げたまま。頬にひとすじ、涙がこぼれる。
<つぶやき>ちょっとだけ強がって、でも切ない思いで苦しくて。愛はどこへ行ったの?
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2012年10月05日

「忘れたい記憶、買います」

(再公開 2017/04/16)
診察室のような一室。香織(かおり)がしのぶにつき添(そ)われて座っている。その前には白衣を着た男。カルテに何か書き込みをしていた。
香織「あの、私、どこが悪かったんですか?」
「もう大丈夫ですよ。これで、スッキリしたと思います。注意しなければいけないことは、お友だちに伝えておきましたので、彼女の言うことはちゃんと守って下さいね」
香織「あっ、はい。(しのぶに)ねえ、私、どうしちゃったのかな?」
しのぶ「もう、風邪よ、風邪。あたしの言うこと聞かないから、こじらせちゃったんでしょ」
香織「そうなの?」
「では、受付でお支払いをしますので、しばらくお待ち下さい」
二人は部屋を出る。香織は少しふらついたが、しのぶがしっかり支えてやった。
数日後、二人の姿は街中にあった。香織は楽しそうに笑っている。前から来た男が香織を見つけて声をかけてきた。
山本「(ニヤつきながら)香織じゃない。久しぶりだな」
香織は誰だか分からず、しのぶの顔を見る。しのぶは二人の間に入り、
しのぶ「人違いです。(香織に)さあ、行きましょ」
山本「なあ、お前、今どこにいるんだよ。何で引っ越したんだ。連絡先教えろよ!」
しのぶは構わず、香織を引っ張って歩いて行く。山本(やまもと)、追いかける。しのぶは、山本から逃げるようにして、香織の手を取り走り出す。
香織「ねえ、どうしたのよ。今の人って…」
しのぶ「いいから、走って!」
翌日、同じ場所。香織が一人で携帯でしゃべりながら歩いている。
香織「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても。……。うん、これから帰るね」
香織、携帯を切る。目の前に山本が立っていた。香織、驚いて立ち止まる。
山本「よっ。やっと会えたな。ずっと待ってたんだぞ」
香織「あ、あの。人違いじゃないですか。私、あなたのこと知らないし…」
香織、歩き出す。山本、香織の腕を強くつかんで引き寄せる。
山本「待てよ。俺から逃げられるとでも思ってるのか。いいから、ちょっと付き合えよ」
山本、無理やり香織を引っ張って行こうとする。いつの間にか、黒ずくめの女が山本の前に立ちはだかる。山本、その女をにらみつけて、
山本「何だ、お前。邪魔(じゃま)するな。とっとと消えろ」
山本、女を突き飛ばそうとする。だが、女は山本の手をつかみ締(し)め上げる。思わず、香織を離す山本。女は余裕の顔で香織に、
「行きなさい。あなたには関係ないことよ」
香織はその場を走り去る。女は手を離し、銃のようなものを突きつける。
「消えるのは、あなたの方よ。このウジ虫野郎(やろう)」
女は引き金を引く。青白い閃光(せんこう)が走り、山本に当たる。彼の姿は一瞬に消える。
「(携帯をかけて)元彼の消去、完了です。引き続き、彼女のサポートを続けます」
<つぶやき>嫌な記憶を買い取ってくれる。未来の世界には、そんな会社ができてるかも。
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2012年10月19日

「ナビゲーション」

(再公開 2017/04/25)
乗用車の中。ドライブに出かけた二人。楽しそうである。目的地に近づいた頃。
「ねえ。あたし、ここら辺は詳(くわ)しいのよ。前に、よく遊びに来てたから」
「へーえ、そうなんだ。家族と来てたの?」
「ううん。前にね、付き合ってた人と。楽しかったわよ」
「そ、そうか…。(複雑な気持ちでつぶやく)何なんだよ、それ…」
「(急に)そこ、左へ入って。左よ!」
「えっ、でも、ナビは直進なんだけど」
「いいの。こっちの方が近道なんだから。言う通りにしなよ」
男、仕方なく彼女の言う通りに左に曲がる。
「ほんとに大丈夫なの。何か、違う方へ行っちゃうんじゃない?」
「大丈夫だって。あたし、これでも一度も道に迷ったことないんだから」
「でも、それって、どうなのかな?」
「なに。あたしのこと信じてないの? あなたって、そういう人だったの」
「いや、そういうことじゃなくて。ここは、やっぱり地図でいった方が…」
「(突然ナビの電源を切って)あたしがナビしてるんだから、こんなの見ないで」
「(驚き)ああっ、そんな…」
女のナビで車は走り続ける。いつの間にか、山の中へと突き進んでいた。
「あの、どんどん道が細くなってくんだけど。ほんとに、大丈夫なの?」
「(不安な素振(そぶ)りを見せるが)うん、大丈夫よ。だって、裏道(うらみち)なんだから、こんなもんよ」
男、限界(げんかい)を感じて車をとめる。女の方を見て、
「なあ、戻らないか? このまま行ったら、道が無くなっちゃう気がするんだ」
「(バツが悪そうに)そ、そうね。そうしましょ」
男、何とか車をUターンさせてゆっくり走り出す。女はナビの電源を入れる。
「(ナビの画面を見て)あれ、どうなってるの。道がなくなってる!」
「大丈夫だよ。今来た道を戻ればいいんだから」
「もう、何で! あなたのせいよ。何とかしなさいよ!」
「えっ? だって、君がこっちだって…」
「あたしのせいだって言うの。あたしは、早く着いた方がいいと思って…」
「分かったよ。君のせいなんかじゃないから。何も、君が悪いなんて…」
「思ってる! 思ってるでしょ。絶対、そうに決まってるわ」
「何言ってんだよ。俺は、そんなこと…」
「いつもそうよ。あなたの目は、あたしをバカにしてるとしか思えない」
「なにそれ。そんなこと言われても、俺はこういう顔だから。どうしろって言うんだよ」
「もう、どうでもいいわよ! あたし、帰る。あなたとは、もう一緒にいたくない!」
「分かったよ。家まで送ってくから。もう、そんなこと言うなよ」
女、膨(ふく)れっ面をして黙ってしまう。しばらくすると、女は穏やかな顔で眠りについた。
<つぶやき>せっかくのドライブです。喧嘩なんかしたら、楽しくなくなっちゃいますよ。
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2012年11月02日

「違うでしょ」

○小さな食堂(しょくどう)の店先(みせさき)
どこにでもあるような食堂。目新しいものはないが値段は安くて、まあまあ美味(おい)しいものが食べられる。まだ贅沢(ぜいたく)が出来ない若い二人は、ちょくちょく利用していた。
店に入ろうとする男性。だが、女性のほうは店の前で足を止めてしまう。
「(えっ、ここ? 何で?)ねえ、違(ちが)うよね? だって、今日は…」
「ごめん。ちょっと、いろいろあって…。本当は、他の店を予約(よやく)してたんだけど、そこがね、何か食中毒(しょくちゅうどく)出したとかで、営業停止になっちゃって…」
「でもでも、ここは違うよね。だって…(わたしの誕生日よ。それなのに…)」
「他の店を探してみたんだけど、どこも一杯(いっぱい)で、予約が取れなかったんだよ」
「それで、このお店?(えっ、そんなの…)」
「入ろうよ。もう、お腹(なか)すいちゃった。ねっ」
男は店内へ入っていく。女はがっかりしたような顔をする。
○回想(かいそう)・彼女のアパートの前(夜)
デートのあと、彼女を家まで送ってきた彼。別れ際(ぎわ)に、
「今日は楽しかったね。また明日…。(女が少し離れたところを呼び止めて)そうだ。今度の誕生日には、絶対びっくりさせるから。楽しみにしてて」
笑顔で手を振る男。女も小さく手を振り返す。
○同じ食堂の店先
まだ店の前に立っている女。口に手を当てて何か思案顔(しあんがお)。
「(楽しみにしててって言ったくせに。もう、がっかりだわ。あっ、ひょっとして貸し切り? わたしのために…。でも…、ちょっと違うけど、しょうがないか…)」
女は店の中へ入って行く。
○同 店内
テーブルが四つほど並び、カウンター席もある。他の客が数人、食事をしていた。彼は一番奥のテーブルに座って、彼女に小さく手招(てまね)きをする。彼女は店の中がいつも通りなので、さらにがっかりした顔になる。足取り重く、彼の前まで行き座る。
「いつものでいいかな? それとも、何か他のにする?」
「ねえ、その前に、ちょっと確認(かくにん)しときたいんだけど。この前、言ったよね。誕生日にはびっくりさせるって…。あれって…(プロポーズじゃかいのかよ)」
「あ、それね…。えっと…、まあいいか。あの、僕と結婚して下さい。指輪(ゆびわ)は…、ちょっと手違(てちが)いがあって、間(ま)に合わなかったんだよね。ごめんね…」
「えっ…。(このタイミング? 言っちゃうんだ。さらっと、こんな大事(だいじ)なこと…。違うでしょ? 違うよね。もう、信じられない。指輪がないんなら別に日にしなさいよ)」
女はもやもやした笑い方をして、
「びっくりさせるって、こういうことなんだ。よく分かったわ。ああ、びっくりだわ。ほんと…。わたし、帰るね。さようなら」
女は立ち上がり、すたすたと店を出て行った。男は茫然(ぼうぜん)と女を見送った。
<つぶやき>カッコ内の台詞は、彼女の心の声です。誰でも、違うと思っちゃいますよね。
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2016年07月06日
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