連載物語

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連載物語

「空からきた少女」033

「極秘命令」
 アールは満足(まんぞく)げに言った。「ハンメル博士(はかせ)が関わっているのは間違いないだろう。今でも稼働(かどう)しているとなると、どんな進化(しんか)をとげているか予測(よそく)できない。そのつもりでいてくれ」
「いったい、どんなものを探すのですか?」リーダーが思案(しあん)顔で言った。「もっと詳(くわ)しい情報(じょうほう)がなければ…」
「我々(われわれ)がもっている情報はごくわずかで断片的(だんぺんてき)なものだが、後で届(とど)けさせよう。不測(ふそく)の事態(じたい)に備(そな)えて、万全(ばんぜん)なものに仕上げてくれ」
「しかし、その兵器(へいき)について詳しく分析(ぶんせき)して、充分(じゅうぶん)に対応(たいおう)できるように調整(ちょうせい)しなくては。それからでないと、送り込むことはできません」
「そこまで待つことはできない。後は実戦(じっせん)で調整してくれ。そういう機能(きのう)も備(そな)えているのだろう。それに、武器の搭載(とうさい)も可能のはずだ。さらに言えば、パワーも報告(ほうこく)されたものより数倍あると聞いている。違(ちが)うかね?」
 アールの言葉に、一同は黙(だま)り込んだ。開発の進捗状況(しんちょくじょうきょう)も把握(はあく)されているようだ。アールはさらに続けた。
「チップメル教授には、未知(みち)の宇宙生物についての対応データを早急(そうきゅう)に作成(さくせい)してもらいたい。その間に、搭載可能な武器を装備(そうび)させて、最終調整(さいしゅうちょうせい)を完了(かんりょう)すること。以上だ」
 アールが言い終わると、モニターは消された。ここでは、上からの命令(めいれい)には従(したが)わなければならない。研究を続けるためには、それが絶対条件(ぜったいじょうけん)なのだ。
<つぶやき>難しいことに挑戦(ちょうせん)する。その心意気(こころいき)があれば、成功(せいこう)への道が開けるかも…。
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2017年04月04日

「空からきた少女」034

「黒いジェル」
 会議(かいぎ)が終わると、チップメル教授(きょうじゅ)はロボット開発者(かいはつしゃ)たちに案内(あんない)されて研究室(けんきゅうしつ)へ向かった。――その研究室にはいくつもの装置(そうち)が置かれ、通路(つうろ)もないほど雑然(ざつぜん)としていた。彼らは装置の間をすり抜(ぬ)けて、一番奥の小部屋に教授を招(まね)き入れた。そこは他の部屋とは違い、透明な壁(かべ)ではなく、何か金属のようなもので出来ていた。部屋の中央には台があり、五十センチ四方の透明(とうめい)な容器(ようき)が置かれている。その中には、黒いジェル状の物質(ぶっしつ)が入れられていた。
「これが、我々(われわれ)が開発した新型ロボットさ」
 緑色(みどりいろ)の肌(はだ)をした男が容器を指差(ゆびさ)し、ニヤリと笑った。唖然(あぜん)としている教授を見て楽しんでいるようだ。さらに男は続けた。
「この物質は、どんな形にも変形(へんけい)できるんだ。では、我々(われわれ)の最愛(さいあい)の子供を紹介(しょうかい)しよう」
 男はポケットからピンポン玉ほどの球体(きゅうたい)を取り出し、教授に見せると、容器の中へ投げ込んだ。すると、ジェル状の物質がうごめきだし、中央部分が盛(も)り上がってきた。教授は不思議(ふしぎ)に思い、容器に一歩近づいた。まるで新種(しんしゅ)の生き物のようで、興味(きょうみ)をひいたのだ。
 物質の動きがいったん止まると、盛り上がった部分に目のようなものが現れた。次の瞬間(しゅんかん)、そこから赤い光が飛び出して教授を捉(とら)えた。教授は、一瞬(いっしゅん)身体の自由を奪(うば)われた。赤い光は教授の全身を照らし出した。
<つぶやき>不思議なものを見ると、それが何なのか知りたくなる。でも注意しないと…。
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2017年04月13日

「空からきた少女」035

「新型ロボット」
 赤い光が消えると、チップメル教授は膝(ひざ)をついて屈(かが)み込んだ。身体中を虫が這(は)い回ったようで、何とも嫌(いや)な気分になったのだ。そんな嫌な感覚(かんかく)がおさまると、教授は目を開けた。すると、目の前に誰かの足元(あしもと)が見えた。教授は、視線(しせん)を上げていく。そこに立っている人物の顔を見て、教授は腰(こし)を抜(ぬ)かした。そこにいたのは、紛(まぎ)れもない自分自身だったのだ。
「どうだね。傑作(けっさく)だろう」
 緑の男は嬉(うれ)しそうにまた笑った。
「こいつは、すべてをコピーすることが出来るんだ。強度(きょうど)は違(ちが)うがね」
 緑の男は教授を後ろへさがらせると、教授の姿をしたロボットに向かって爆弾(ばくだん)を投げつけた。爆発音とともに一面(いちめん)に煙(けむり)が充満(じゅうまん)した。だが、煙はすぐに天井(てんじょう)に吸(す)い込まれていく。煙が消えた後には、傷(きず)ひとつついていないロボットが、何事(なにごと)もなかったように立っていた。
「これはすごい」教授は思わずつぶやいた。
「こいつはプロトタイプだ。まだまだ改良(かいりょう)の余地(よち)があるんだがね。時間がないのが残念(ざんねん)だ」
 別の研究員が言った。「この子に組み込まれている電子頭脳(ずのう)は、最高の出来なんだ。学習や分析(ぶんせき)能力が優(すぐ)れているのはもちろんだが、より我々(われわれ)に近い思考(しこう)を――」
「おい! 君はしゃべりすぎだ」緑の男はその研究員を制(せい)した。
<つぶやき>同じ人間が作れたら、面倒なことはすべて任せて…。そんなこと考えちゃ…。
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2017年04月22日

「空からきた少女」036

「意味深な…」
 緑の男は、チップメル教授の方を見て言った。
「あとは、あなたの作るデータにかかっている。よろしく頼むよ」
「はい。しかし、これはすばらしい」
 教授はロボットに近づいて言った。「これなら、原始的(げんしてき)な文明(ぶんめい)を持っている生物がいても、姿を真似(まね)ることで影響(えいきょう)を最小限に抑(おさ)えることができる。何より、間近(まぢか)な場所で観察(かんさつ)が出来るんだ。ぜひ、私の研究にも使いたい」
「それは無理(むり)だな。あなたは、まだ何も分かっていないようだ」
 緑の男はつぶやいた。「我々(われわれ)の開発(かいはつ)したものをどう使うかは、上の奴(やつ)らが決めることだ。我々が自由に使えるのは、この穴蔵(あなぐら)の中だけだよ」
 教授は改(あらた)めて理解(りかい)した。もう、この惑星(わくせい)アルメスからは出られないことを。二度と、家族や友人たちに会うこともできないのだ。教授は緑の男に訊(き)いた。
「君は、一生(いっしょう)ここで研究を続けるのか? それで、満足なのか?」
「ああ、もちろんさ。ここには煩(わずら)わしいことは全くない。自分の研究に没頭(ぼっとう)できるんだ。最高の環境だよ。それに…」
 緑の男は声をひそめて言った。
「ここは閉ざされた場所じゃない。あなたにも、いずれ分かるときがくるはずだ」
 緑の男は、意味深(いみしん)な笑(え)みを浮かべて教授を見つめた。
<つぶやき>チップメル教授はこれからどうなるのでしょうか? そしてロボットは…。
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2017年05月01日

「空からきた少女」037

「鎮守の森」
 木漏(こも)れ日が、まるでパッチワークのように森の中を照(て)らしていた。森の奥からは鳥のさえずりが聞こえ、あちこちに生き物の息吹(いぶき)が感じられる。
 ここは植林(しょくりん)の森。杉(すぎ)の大木が真っすぐに空へ伸(の)びていた。だが、木の周(まわ)りには下草(したくさ)が生(お)い茂(しげ)り、倒木(とうぼく)や枯(か)れ枝(えだ)がそのままにされている。昔はきちんと手入れされていたはずなのに、ここ数年は手をかけられていないようだ。
 その森の中を、ひとりの少女が歩いていた。淡(あわ)いピンクのワンピースを着て、とても可愛(かわい)らしい少女だ。でも、森を歩くには不似合(ふにあ)いだ。せっかくのきれいな靴(くつ)や服が、泥(どろ)などで汚れてしまっていた。長い黒髪にはクモの巣(す)がくっつき、どこかで引っかけたのだろう、スカートの裾(すそ)が破(やぶ)れていた。彼女はそんなこと気にならないのか、夢遊病者(むゆうびょうしゃ)のようにふらふらと歩いていた。その顔はどこか寂(さび)しげで、虚(うつ)ろな目をしている。
 植林の森のはずれ、自然の森との境界(きょうかい)に大きな岩(いわ)があった。なぜここに大岩があるのか、とても不思議な感じだ。まるで誰かが運んで来たかのように、ぽつんとひとつだけ居座(いすわ)っていた。その大岩の近くには、小さくて古い神社(じんじゃ)が建てられている。神社の裏手(うらて)には山が連(つら)なり、自然のままの森が広がっていた。
 少女は、その森の方へと歩(ほ)を進めているようだ。まるで何かに引き寄せられるように…。
<つぶやき>場面はどこにでもあるような山間の町へ。これからどんな展開をするのか?
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2017年05月11日

「空からきた少女」038

「出会い」
 大岩(おおいわ)の上に、少年がぼんやりと寝転(ねころ)がっていた。彼はむしゃくしゃしたときや、一人になりたいとき、いつもここに来ていた。ここには滅多(めった)に人は来ないし、彼にとって落ち着ける場所になっているようだ。
 小枝(こえだ)を踏(ふ)み折(お)る音で、彼は起き上がった。見ると、女の子がこちらへ近づいてくる。それは、見たことのない子だ。ここらへんの子供じゃないのだろう。彼はそう思った。彼女はどんどん大岩の方に近づいてくる。彼は高い場所にいるので、彼女はまだ気づいていないようだ。彼女は大岩の前を通り過ぎ、森の奥の方へ歩いて行く。彼は慌(あわ)てて大岩から飛びおりて、彼女を追(お)いかけた。そして、彼女の前で立ち止まり、行く手をふさいだ。
「だめだよ。入っちゃ」少年は声をかけた。
 少女はその声で我(われ)に返ったのか、急に目の前に現れた少年に驚いて後(あと)ずさった。
「この森を知らない人間が入ると、戻(もど)れなくなるから」少年の目は真剣(しんけん)だった。
 少女はおびえていた。それは少年にもはっきりと分かった。彼女は長い髪(かみ)を震(ふる)える指でくるくると回しながら、周(まわ)りを見まわして、「あたし…。どうして……」
「おまえ、どこから来たんだ? なんで、こんなところに」
 いつもの乱暴者(らんぼうもの)の彼なら、声などかけなかっただろう。でも、なぜか分からないが、放(ほ)っておけなかったのだ。彼女はそのことには何も答えず、何かを思い出したように、
「あたし、帰らなきゃ…」と、少女はふらふらとまた歩き出した。
<つぶやき>彼女はなぜこんな所へ来たのでしょうか? そこには何か理由があるのか。
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2017年05月29日
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