連載物語

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連載物語

「空からきた少女」031

「集められた頭脳」
 みんなの視線(しせん)を集めた部外者(ぶがいしゃ)の一人が、顔色を変えることなく面倒臭(めんどくさ)そうに答えた。
「それはこっちが聞きたいよ。われわれは呼ばれたから来ただけだ」
 チームリーダーはみんなに聞こえるように言った。
「探査(たんさ)の詳細(しょうさい)は私にもわからない。が、上の連中(れんちゅう)から、今回の探査にどうしても必要(ひつよう)な人材(じんざい)だ、と聞いています」
「われわれは兵器(へいき)を作るためにやってきたんじゃない」誰かが声をあげた。
「それは、もちろんです。しかし、私たちには運用(うんよう)の決定権(けっていけん)はありません。私たちの研究をどう生かすかは、この研究所の責任者(せきにんしゃ)が決めることです」
 会議室に重い空気がただよった。ちょうどそこに、チップメル教授(きょうじゅ)が顔を出した。教授は一同の注目(ちゅうもく)を集めてしまい、思わず後(あと)ずさった。
 チームリーダーがチップメル教授をみんなに紹介(しょうかい)した。その場にいた生物学者は、彼の名を聞き驚きの声をあげる。教授は宇宙生物の環境(かんきょう)による進化(しんか)についての第一人者なのだ。
 その時、天井(てんじょう)からモニターが静かに下りてきた。そこに映し出されたのはアールの姿。その場にいた全員に緊張(きんちょう)が走った。アールはそこに集められたメンバーに向かって、何の感情(かんじょう)も見せず今回の任務(にんむ)の説明(せつめい)を始めた。
<つぶやき>いろんな人の知恵(ちえ)と力を合わせると、今までに無かったものが生まれてくる。
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2017年03月17日

「空からきた少女」032

「任務」
 アールの説明は簡単(かんたん)なものだった。だが、波紋(はもん)を広げるにはそれで充分(じゅうぶん)だ。
「昔、ある国で作られた兵器が辺境(へんきょう)の宇宙域(うちゅういき)へ送られた。その兵器は自爆(じばく)したものと思われるが、それを確認してもらいたい。もし、兵器の稼働(かどう)が確認できたら、ただちに破壊(はかい)すること。これが今回君たちに与えられた任務(にんむ)だ。ただちに取り掛(か)かってくれ」
 兵器のスペシャリストが声をあげた。「昔の兵器なのに急ぐ必要があるのか?」
 その問いに答えるようにアールは言った。「君は、機械進化論(きかいしんかろん)を知っているかね?」
「そんなのはでたらめの作り話さ。信じてる奴(やつ)なんていやしない」
「そこにいるチップメル教授(きょうじゅ)は、可能(かのう)だと思っているようだが」
 アールの言葉に、一同は教授の方を見つめた。教授はどう答えればいいのか戸惑(とまど)った。だが、機械進化論についてあちこちで意見が飛び出した。
「夢のような話だけど、けして不可能なことじゃない」
「私たちの探査機(たんさき)だって、それに近いものを目指(めざ)しているじゃない」
「我々(われわれ)でもまだ実現(じつげん)できないのに、完全な兵器として使えるものが作れるのか?」
「もし作れるとしたら、ハンメル博士(はかせ)ぐらいだろう」
 誰かが冗談半分(じょうだんはんぶん)に言った。他の人たちも、その意見には反対するものはいないようだ。
 アールは意味深長(いみしんちょう)な笑みを浮かべて、「それは正しい判断(はんだん)と言っていいだろう」
<つぶやき>新しいものを作るのは大変です。最初にそれを始めた人はすごいと思います。
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2017年03月26日

「空からきた少女」033

「極秘命令」
 アールは満足(まんぞく)げに言った。「ハンメル博士(はかせ)が関わっているのは間違いないだろう。今でも稼働(かどう)しているとなると、どんな進化(しんか)をとげているか予測(よそく)できない。そのつもりでいてくれ」
「いったい、どんなものを探すのですか?」リーダーが思案(しあん)顔で言った。「もっと詳(くわ)しい情報(じょうほう)がなければ…」
「我々(われわれ)がもっている情報はごくわずかで断片的(だんぺんてき)なものだが、後で届(とど)けさせよう。不測(ふそく)の事態(じたい)に備(そな)えて、万全(ばんぜん)なものに仕上げてくれ」
「しかし、その兵器(へいき)について詳しく分析(ぶんせき)して、充分(じゅうぶん)に対応(たいおう)できるように調整(ちょうせい)しなくては。それからでないと、送り込むことはできません」
「そこまで待つことはできない。後は実戦(じっせん)で調整してくれ。そういう機能(きのう)も備(そな)えているのだろう。それに、武器の搭載(とうさい)も可能のはずだ。さらに言えば、パワーも報告(ほうこく)されたものより数倍あると聞いている。違(ちが)うかね?」
 アールの言葉に、一同は黙(だま)り込んだ。開発の進捗状況(しんちょくじょうきょう)も把握(はあく)されているようだ。アールはさらに続けた。
「チップメル教授には、未知(みち)の宇宙生物についての対応データを早急(そうきゅう)に作成(さくせい)してもらいたい。その間に、搭載可能な武器を装備(そうび)させて、最終調整(さいしゅうちょうせい)を完了(かんりょう)すること。以上だ」
 アールが言い終わると、モニターは消された。ここでは、上からの命令(めいれい)には従(したが)わなければならない。研究を続けるためには、それが絶対条件(ぜったいじょうけん)なのだ。
<つぶやき>難しいことに挑戦(ちょうせん)する。その心意気(こころいき)があれば、成功(せいこう)への道が開けるかも…。
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2017年04月04日

「空からきた少女」034

「黒いジェル」
 会議(かいぎ)が終わると、チップメル教授(きょうじゅ)はロボット開発者(かいはつしゃ)たちに案内(あんない)されて研究室(けんきゅうしつ)へ向かった。――その研究室にはいくつもの装置(そうち)が置かれ、通路(つうろ)もないほど雑然(ざつぜん)としていた。彼らは装置の間をすり抜(ぬ)けて、一番奥の小部屋に教授を招(まね)き入れた。そこは他の部屋とは違い、透明な壁(かべ)ではなく、何か金属のようなもので出来ていた。部屋の中央には台があり、五十センチ四方の透明(とうめい)な容器(ようき)が置かれている。その中には、黒いジェル状の物質(ぶっしつ)が入れられていた。
「これが、我々(われわれ)が開発した新型ロボットさ」
 緑色(みどりいろ)の肌(はだ)をした男が容器を指差(ゆびさ)し、ニヤリと笑った。唖然(あぜん)としている教授を見て楽しんでいるようだ。さらに男は続けた。
「この物質は、どんな形にも変形(へんけい)できるんだ。では、我々(われわれ)の最愛(さいあい)の子供を紹介(しょうかい)しよう」
 男はポケットからピンポン玉ほどの球体(きゅうたい)を取り出し、教授に見せると、容器の中へ投げ込んだ。すると、ジェル状の物質がうごめきだし、中央部分が盛(も)り上がってきた。教授は不思議(ふしぎ)に思い、容器に一歩近づいた。まるで新種(しんしゅ)の生き物のようで、興味(きょうみ)をひいたのだ。
 物質の動きがいったん止まると、盛り上がった部分に目のようなものが現れた。次の瞬間(しゅんかん)、そこから赤い光が飛び出して教授を捉(とら)えた。教授は、一瞬(いっしゅん)身体の自由を奪(うば)われた。赤い光は教授の全身を照らし出した。
<つぶやき>不思議なものを見ると、それが何なのか知りたくなる。でも注意しないと…。
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2017年04月13日

「空からきた少女」035

「新型ロボット」
 赤い光が消えると、チップメル教授は膝(ひざ)をついて屈(かが)み込んだ。身体中を虫が這(は)い回ったようで、何とも嫌(いや)な気分になったのだ。そんな嫌な感覚(かんかく)がおさまると、教授は目を開けた。すると、目の前に誰かの足元(あしもと)が見えた。教授は、視線(しせん)を上げていく。そこに立っている人物の顔を見て、教授は腰(こし)を抜(ぬ)かした。そこにいたのは、紛(まぎ)れもない自分自身だったのだ。
「どうだね。傑作(けっさく)だろう」
 緑の男は嬉(うれ)しそうにまた笑った。
「こいつは、すべてをコピーすることが出来るんだ。強度(きょうど)は違(ちが)うがね」
 緑の男は教授を後ろへさがらせると、教授の姿をしたロボットに向かって爆弾(ばくだん)を投げつけた。爆発音とともに一面(いちめん)に煙(けむり)が充満(じゅうまん)した。だが、煙はすぐに天井(てんじょう)に吸(す)い込まれていく。煙が消えた後には、傷(きず)ひとつついていないロボットが、何事(なにごと)もなかったように立っていた。
「これはすごい」教授は思わずつぶやいた。
「こいつはプロトタイプだ。まだまだ改良(かいりょう)の余地(よち)があるんだがね。時間がないのが残念(ざんねん)だ」
 別の研究員が言った。「この子に組み込まれている電子頭脳(ずのう)は、最高の出来なんだ。学習や分析(ぶんせき)能力が優(すぐ)れているのはもちろんだが、より我々(われわれ)に近い思考(しこう)を――」
「おい! 君はしゃべりすぎだ」緑の男はその研究員を制(せい)した。
<つぶやき>同じ人間が作れたら、面倒なことはすべて任せて…。そんなこと考えちゃ…。
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2017年04月22日

「空からきた少女」036

「意味深な…」
 緑の男は、チップメル教授の方を見て言った。
「あとは、あなたの作るデータにかかっている。よろしく頼むよ」
「はい。しかし、これはすばらしい」
 教授はロボットに近づいて言った。「これなら、原始的(げんしてき)な文明(ぶんめい)を持っている生物がいても、姿を真似(まね)ることで影響(えいきょう)を最小限に抑(おさ)えることができる。何より、間近(まぢか)な場所で観察(かんさつ)が出来るんだ。ぜひ、私の研究にも使いたい」
「それは無理(むり)だな。あなたは、まだ何も分かっていないようだ」
 緑の男はつぶやいた。「我々(われわれ)の開発(かいはつ)したものをどう使うかは、上の奴(やつ)らが決めることだ。我々が自由に使えるのは、この穴蔵(あなぐら)の中だけだよ」
 教授は改(あらた)めて理解(りかい)した。もう、この惑星(わくせい)アルメスからは出られないことを。二度と、家族や友人たちに会うこともできないのだ。教授は緑の男に訊(き)いた。
「君は、一生(いっしょう)ここで研究を続けるのか? それで、満足なのか?」
「ああ、もちろんさ。ここには煩(わずら)わしいことは全くない。自分の研究に没頭(ぼっとう)できるんだ。最高の環境だよ。それに…」
 緑の男は声をひそめて言った。
「ここは閉ざされた場所じゃない。あなたにも、いずれ分かるときがくるはずだ」
 緑の男は、意味深(いみしん)な笑(え)みを浮かべて教授を見つめた。
<つぶやき>チップメル教授はこれからどうなるのでしょうか? そしてロボットは…。
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2017年05月01日
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