連載物語

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連載物語

「空からきた少女」028

「巨大な施設」
 彼らの中には無理やり連れてこられた者もいたが、誰一人として監獄(かんごく)のような研究所から逃げ出そうとする者はいなかった。
 なぜなら、ここは彼らにとって最高の場所だからだ。自分のやりたい研究を、誰にも邪魔(じゃま)されることなくできるのだ。倫理(りんり)や道徳(どうとく)も関係ない。それに研究資金の心配もまったくなく、どんな希少(きしょう)な高価なものでも注文を出せば必ず手に入れられるのだ。監視(かんし)されたり多少の不自由はあるものの、そんなことを気にする者などいなかった。誰もが研究に没頭し、他の研究者とも意見をぶつけ合い、時間のたつのも忘れるような忙しさだ。
 チップメル教授が初めて研究所に足を踏み入れたとき、あまりの規模の大きさに驚いた。入口の扉が開くと大きな縦穴の空間が目の前に広がり、底を覗くと足がすくむほど深かった。縦穴の周りには透明の壁で仕切られた部屋があり、それが何層も底の方まで続いていた。ひとつひとつの部屋では、何人もの研究者が忙しそうに動きまわっている。
 呆気(あっけ)にとられている教授に、案内ロボットが近づいて来て、後ろへ乗るように指示をした。ロボットの後ろへ回ってみると立って乗れる部分がある。教授が指示どおりに上に乗ると、それは動き出した。何層か下の階に下り、迷路のような通路を進んで行く。その間に、何カ所も扉で区切られた所があり、センサーによるチェックが行われた。教授は警備の厳重(げんじゅう)さを目(ま)の当(あ)たりにして、とんでもない所に来てしまったんだと実感した。
<つぶやき>自由とは何でしょう。それは誰かが決めるものではなく、自分の中にある。
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2017年02月18日

「空からきた少女」029

「つのる不安」
 チップメル教授(きょうじゅ)は、自分が今何処(どこ)にいるのかまったく分からなくなった。
「さっきの入口へ戻るには、このロボットに案内させないと…。でも、こいつは私の言うことを聞いてくれるのか?」教授はそんなことを漠然(ばくぜん)と考えていた。
 その時、突然目の前で爆発(ばくはつ)が起こった。教授は爆音(ばくおん)に驚いて、ロボットにしがみついた。十数メートル先にある部屋の扉(とびら)が吹(ふ)っ飛び、煙(けむり)がもくもくと外へ吐(は)き出されている。
 煙はまたたく間に通路に充満(じゅうまん)し、あちこちで警報(けいほう)が鳴(な)り響いた。部屋の中では炎(ほのお)が立ち上っている。次の瞬間(しゅんかん)、部屋の天井から消火液が勢いよく噴射(ふんしゃ)され、あっという間に炎を消し止めてしまった。あれだけ立ち上っていた煙も、天井の穴の中へ吸い込まれていく。そして、どこからともなくロボットたちが集まってきて、部屋の中の研究員を救助(きゅうじょ)し、あたりに散乱(さんらん)している残骸(ざんがい)の後片付けを開始した。
 かなり大きな爆発だったのに、透明(とうめい)の壁(かべ)はまったく無傷(むきず)だった。それに、不思議なことに他の部屋からは誰も出て来ない。まったく無関心(むかんしん)なのか、それとも本当に気づかなかったのか…。透明の研究室の中では、忙しそうに働いている研究員の姿があった。
 案内ロボットは別ルートを検索(けんさく)し終わると、その場を離れて脇(わき)の通路を進んで行った。チップメル教授はますます不安になってきた。この先、どんな運命が待っているのか、まったく予測(よそく)ができないのだ。
<つぶやき>先のことが分からないと不安です。でも、先へ進まなくちゃ何も始まらない。
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2017年02月27日

「空からきた少女」030

「探査プロジェクト」
 この研究所(けんきゅうしょ)では、以前(いぜん)から新型の探査機(たんさき)の開発(かいはつ)が進められていた。それは、どんな環境(かんきょう)にも適応(てきおう)でき、不測(ふそく)の事態(じたい)でも判断(はんだん)を下せる自立型(じりつがた)探査ロボット。グリーク政府は他の国に先駆(さきが)けて、未開(みかい)の宇宙の探査に乗り出そうとしていた。広大な宇宙には膨大(ぼうだい)な資源(しげん)が眠っている。それを独占(どくせん)することができれば、グリークの力は確固(かっこ)たるものになる。
 透明(とうめい)な壁(かべ)に囲まれた会議室には、数十人の研究者や技術者が集められていた。この探査機のプロジェクトが動きはじめて以来、開発メンバー全員が顔をそろえるのは初めてだった。会議室の中では、いろいろな言葉が飛び交(か)いざわついていた。チームリーダーと思われる男が入ってくると、やっと静かになった。
 バルンガ星人(せいじん)のリーダーは一同を前にして言った。
「さあ、私たちの子どもを送り出す時がきました。いよいよ、探査が始まります」
 会議室に歓声(かんせい)があがった。今までの研究成果をみせるときがきたのだ。さらに、リーダーは続けた。「探査のエリアは、六万光年離れた辺境(へんきょう)の宇宙域です」
 その時、誰かが声をあげた。「ちょっと待てくれ。何でここに部外者(ぶがいしゃ)がいるんだ」
 彼はそう言うと、部屋の隅(すみ)に静かに座っていた数名を指さした。そこにいたのは、小型兵器の開発をしている技術者たちだった。会議室は静まりかえり、彼らに注目(ちゅうもく)が集まった。
<つぶやき>未知のものを探究する。何だかワクワクしますね。そこにはどんな世界が…。
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2017年03月08日

「空からきた少女」031

「集められた頭脳」
 みんなの視線(しせん)を集めた部外者(ぶがいしゃ)の一人が、顔色を変えることなく面倒臭(めんどくさ)そうに答えた。
「それはこっちが聞きたいよ。われわれは呼ばれたから来ただけだ」
 チームリーダーはみんなに聞こえるように言った。
「探査(たんさ)の詳細(しょうさい)は私にもわからない。が、上の連中(れんちゅう)から、今回の探査にどうしても必要(ひつよう)な人材(じんざい)だ、と聞いています」
「われわれは兵器(へいき)を作るためにやってきたんじゃない」誰かが声をあげた。
「それは、もちろんです。しかし、私たちには運用(うんよう)の決定権(けっていけん)はありません。私たちの研究をどう生かすかは、この研究所の責任者(せきにんしゃ)が決めることです」
 会議室に重い空気がただよった。ちょうどそこに、チップメル教授(きょうじゅ)が顔を出した。教授は一同の注目(ちゅうもく)を集めてしまい、思わず後(あと)ずさった。
 チームリーダーがチップメル教授をみんなに紹介(しょうかい)した。その場にいた生物学者は、彼の名を聞き驚きの声をあげる。教授は宇宙生物の環境(かんきょう)による進化(しんか)についての第一人者なのだ。
 その時、天井(てんじょう)からモニターが静かに下りてきた。そこに映し出されたのはアールの姿。その場にいた全員に緊張(きんちょう)が走った。アールはそこに集められたメンバーに向かって、何の感情(かんじょう)も見せず今回の任務(にんむ)の説明(せつめい)を始めた。
<つぶやき>いろんな人の知恵(ちえ)と力を合わせると、今までに無かったものが生まれてくる。
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2017年03月17日

「空からきた少女」032

「任務」
 アールの説明は簡単(かんたん)なものだった。だが、波紋(はもん)を広げるにはそれで充分(じゅうぶん)だ。
「昔、ある国で作られた兵器が辺境(へんきょう)の宇宙域(うちゅういき)へ送られた。その兵器は自爆(じばく)したものと思われるが、それを確認してもらいたい。もし、兵器の稼働(かどう)が確認できたら、ただちに破壊(はかい)すること。これが今回君たちに与えられた任務(にんむ)だ。ただちに取り掛(か)かってくれ」
 兵器のスペシャリストが声をあげた。「昔の兵器なのに急ぐ必要があるのか?」
 その問いに答えるようにアールは言った。「君は、機械進化論(きかいしんかろん)を知っているかね?」
「そんなのはでたらめの作り話さ。信じてる奴(やつ)なんていやしない」
「そこにいるチップメル教授(きょうじゅ)は、可能(かのう)だと思っているようだが」
 アールの言葉に、一同は教授の方を見つめた。教授はどう答えればいいのか戸惑(とまど)った。だが、機械進化論についてあちこちで意見が飛び出した。
「夢のような話だけど、けして不可能なことじゃない」
「私たちの探査機(たんさき)だって、それに近いものを目指(めざ)しているじゃない」
「我々(われわれ)でもまだ実現(じつげん)できないのに、完全な兵器として使えるものが作れるのか?」
「もし作れるとしたら、ハンメル博士(はかせ)ぐらいだろう」
 誰かが冗談半分(じょうだんはんぶん)に言った。他の人たちも、その意見には反対するものはいないようだ。
 アールは意味深長(いみしんちょう)な笑みを浮かべて、「それは正しい判断(はんだん)と言っていいだろう」
<つぶやき>新しいものを作るのは大変です。最初にそれを始めた人はすごいと思います。
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2017年03月26日

「空からきた少女」033

「極秘命令」
 アールは満足(まんぞく)げに言った。「ハンメル博士(はかせ)が関わっているのは間違いないだろう。今でも稼働(かどう)しているとなると、どんな進化(しんか)をとげているか予測(よそく)できない。そのつもりでいてくれ」
「いったい、どんなものを探すのですか?」リーダーが思案(しあん)顔で言った。「もっと詳(くわ)しい情報(じょうほう)がなければ…」
「我々(われわれ)がもっている情報はごくわずかで断片的(だんぺんてき)なものだが、後で届(とど)けさせよう。不測(ふそく)の事態(じたい)に備(そな)えて、万全(ばんぜん)なものに仕上げてくれ」
「しかし、その兵器(へいき)について詳しく分析(ぶんせき)して、充分(じゅうぶん)に対応(たいおう)できるように調整(ちょうせい)しなくては。それからでないと、送り込むことはできません」
「そこまで待つことはできない。後は実戦(じっせん)で調整してくれ。そういう機能(きのう)も備(そな)えているのだろう。それに、武器の搭載(とうさい)も可能のはずだ。さらに言えば、パワーも報告(ほうこく)されたものより数倍あると聞いている。違(ちが)うかね?」
 アールの言葉に、一同は黙(だま)り込んだ。開発の進捗状況(しんちょくじょうきょう)も把握(はあく)されているようだ。アールはさらに続けた。
「チップメル教授には、未知(みち)の宇宙生物についての対応データを早急(そうきゅう)に作成(さくせい)してもらいたい。その間に、搭載可能な武器を装備(そうび)させて、最終調整(さいしゅうちょうせい)を完了(かんりょう)すること。以上だ」
 アールが言い終わると、モニターは消された。ここでは、上からの命令(めいれい)には従(したが)わなければならない。研究を続けるためには、それが絶対条件(ぜったいじょうけん)なのだ。
<つぶやき>難しいことに挑戦(ちょうせん)する。その心意気(こころいき)があれば、成功(せいこう)への道が開けるかも…。
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2017年04月04日
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