「浮気宣言」

(再公開 2017/06/10)
ある恋人同志の会話。いつまでも煮え切らない男に、女は結婚を匂(にお)わせたようだ。
「君は、本当に僕と結婚したいのか?」
「ええ。あなたは、あたしと結婚する気はあるわよね?」
男、しばらく女を見つめていたが、おもむろに口を開いた。
「まあ、なくはないな」
「何よ、それ。あなた、あたしのことどう思ってるの。はっきり聞かせて」
「どうって? それは、あれだ。まあ、嫌いではないと思うよ」
「えっ? だって、あたしのこと好きだって、愛してるって言ったじゃない」
「それは、君が聞くから。そう答えるしかないだろ」
「(呆れて)何なのよ。それじゃ、あたしのことだましたのね」
「そんなんじゃないよ。(面倒(めんどう)くさそうに)だから、君のこと好きに決まってるだろ。好きじゃなきゃ、付き合わないよ。そんなこと訊くなよ」
「じゃあ、証明して。あたしのこと、どれくらい愛してるか」
「分かったよ。じゃ、結婚すればいいんだろ。そんなの、いつだってしてやるよ」
「ほんと? 約束よ。じゃあ、あたしの両親と会って」
「えっ? そんなの後でいいよ。また今度な」
「ダメよ。今すぐ。明日はどう? 仕事休みなんだし」
「うるさいな。明日は、やることがあるんだよ」
「何よ。今、結婚するって言ったじゃない。あたしたち二人のことよ」
「結婚、結婚って。いっとくけど、僕は結婚しても浮気はするからな」
「はぁ? 何言ってるの。浮気って…」
「だから、浮気宣言だよ。当然じゃないか。君より好きになる女が現れるかもしれないだろ。君は、それでも僕と一緒になりたいのか?」
「そんな…。あなた、そんなこと考えてたの?」
「いけないか。どうせ君だって、何にも考えてないんだろ。ただお気楽(きらく)に結婚したいなんて言ってるだけじゃないか」
女は少しも驚かず、あっさりと言ってのける。
「そう。いいわよ、それで。あたしもそうするから」
「はぁ、何だよそれ」
「だから、あたしも好きな人ができたら、浮気するってことよ」
「何言ってんだ。君は、僕のことが好きなんだろ。僕の妻になりたいって…」
「あなただって、似たようなもんでしょ。そう思わない?」
「君は、いったい何を考えてるんだ?」
「結婚なんて形式的なものよ。結婚したら世間に認められるでしょ。お気楽な主婦の仲間入り。でも、あたしはそんなんじゃ満足できないの。あなた、知ってる? 愛がなくても、結婚はできるのよ。あたしたち、きっといい夫婦になれるわ」
<つぶやき>愛は、どこにいってしまったの? 真心の愛を見失わないようにしましょ。
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2013年01月11日