「空からきた少女」028

「巨大な施設」
 彼らの中には無理やり連れてこられた者もいたが、誰一人として監獄(かんごく)のような研究所から逃げ出そうとする者はいなかった。
 なぜなら、ここは彼らにとって最高の場所だからだ。自分のやりたい研究を、誰にも邪魔(じゃま)されることなくできるのだ。倫理(りんり)や道徳(どうとく)も関係ない。それに研究資金の心配もまったくなく、どんな希少(きしょう)な高価なものでも注文を出せば必ず手に入れられるのだ。監視(かんし)されたり多少の不自由はあるものの、そんなことを気にする者などいなかった。誰もが研究に没頭し、他の研究者とも意見をぶつけ合い、時間のたつのも忘れるような忙しさだ。
 チップメル教授が初めて研究所に足を踏み入れたとき、あまりの規模の大きさに驚いた。入口の扉が開くと大きな縦穴の空間が目の前に広がり、底を覗くと足がすくむほど深かった。縦穴の周りには透明の壁で仕切られた部屋があり、それが何層も底の方まで続いていた。ひとつひとつの部屋では、何人もの研究者が忙しそうに動きまわっている。
 呆気(あっけ)にとられている教授に、案内ロボットが近づいて来て、後ろへ乗るように指示をした。ロボットの後ろへ回ってみると立って乗れる部分がある。教授が指示どおりに上に乗ると、それは動き出した。何層か下の階に下り、迷路のような通路を進んで行く。その間に、何カ所も扉で区切られた所があり、センサーによるチェックが行われた。教授は警備の厳重(げんじゅう)さを目(ま)の当(あ)たりにして、とんでもない所に来てしまったんだと実感した。
<つぶやき>自由とは何でしょう。それは誰かが決めるものではなく、自分の中にある。
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2017年02月18日