「空からきた少女」049

「仲良し」
 菜月(なつき)たち家族がこの町に越(こ)して来たのは、菜月が三年生になったときだ。初めての学校に戸惑(とまど)っている菜月に一番最初に話しかけてくれたのが花代(はなよ)で、家が近いこともあり菜月の最初の友だちになってくれた。今では何でも話せる親友である。
 花代はこの町のことをいろいろ教えてくれた。この土地ならではの習慣(しゅうかん)や、季節(きせつ)ごとのお祭り、行事(ぎょうじ)のことなど、都会育ちの菜月には驚くようなことばかりだ。
 ――菜月たちが学校へ向かう途中(とちゅう)、脇道(わきみち)から男の子が出て来た。六年生の神崎五郎(かんざきごろう)だ。彼も同じ班(はん)になっているのだが、一緒(いっしょ)に登校(とうこう)することはなかった。
 五郎は彼女たちに目もくれず、すたすたと前を歩いて行く。菜月は声をかけようとしたのだが、花代がそれを止めて小声でささやいた。
「やめときなよ。どうせ、一緒に行くわけないわ。ほっときましょうよ」
「でも…」菜月はそれ以上何も言えなかった。
 菜月は五郎のことは何も知らなかった。六年生だし、話をしたこともない。でも、何か気になっていたのだ。他の子とは、雰囲気(ふんいき)がまるで違(ちが)うから…。
 花代は五郎のことが好きではないようだ。それは彼女の五郎を見る目で分かる。菜月もそのことには気づいていた。他の友だちから聞いた話だが、どうやら五郎ではなく彼の家、神崎家のことが嫌いのようだ。昔、何かあったみたい。
<つぶやき>田舎ではいろんな風習があったりするのです。それは昔から続いてきたこと。
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2017年11月15日