「空からきた少女」035

「新型ロボット」
 赤い光が消えると、チップメル教授は膝(ひざ)をついて屈(かが)み込んだ。身体中を虫が這(は)い回ったようで、何とも嫌(いや)な気分になったのだ。そんな嫌な感覚(かんかく)がおさまると、教授は目を開けた。すると、目の前に誰かの足元(あしもと)が見えた。教授は、視線(しせん)を上げていく。そこに立っている人物の顔を見て、教授は腰(こし)を抜(ぬ)かした。そこにいたのは、紛(まぎ)れもない自分自身だったのだ。
「どうだね。傑作(けっさく)だろう」
 緑の男は嬉(うれ)しそうにまた笑った。
「こいつは、すべてをコピーすることが出来るんだ。強度(きょうど)は違(ちが)うがね」
 緑の男は教授を後ろへさがらせると、教授の姿をしたロボットに向かって爆弾(ばくだん)を投げつけた。爆発音とともに一面(いちめん)に煙(けむり)が充満(じゅうまん)した。だが、煙はすぐに天井(てんじょう)に吸(す)い込まれていく。煙が消えた後には、傷(きず)ひとつついていないロボットが、何事(なにごと)もなかったように立っていた。
「これはすごい」教授は思わずつぶやいた。
「こいつはプロトタイプだ。まだまだ改良(かいりょう)の余地(よち)があるんだがね。時間がないのが残念(ざんねん)だ」
 別の研究員が言った。「この子に組み込まれている電子頭脳(ずのう)は、最高の出来なんだ。学習や分析(ぶんせき)能力が優(すぐ)れているのはもちろんだが、より我々(われわれ)に近い思考(しこう)を――」
「おい! 君はしゃべりすぎだ」緑の男はその研究員を制(せい)した。
<つぶやき>同じ人間が作れたら、面倒なことはすべて任せて…。そんなこと考えちゃ…。
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2017年04月22日