「空からきた少女」036

「意味深な…」
 緑の男は、チップメル教授の方を見て言った。
「あとは、あなたの作るデータにかかっている。よろしく頼むよ」
「はい。しかし、これはすばらしい」
 教授はロボットに近づいて言った。「これなら、原始的(げんしてき)な文明(ぶんめい)を持っている生物がいても、姿を真似(まね)ることで影響(えいきょう)を最小限に抑(おさ)えることができる。何より、間近(まぢか)な場所で観察(かんさつ)が出来るんだ。ぜひ、私の研究にも使いたい」
「それは無理(むり)だな。あなたは、まだ何も分かっていないようだ」
 緑の男はつぶやいた。「我々(われわれ)の開発(かいはつ)したものをどう使うかは、上の奴(やつ)らが決めることだ。我々が自由に使えるのは、この穴蔵(あなぐら)の中だけだよ」
 教授は改(あらた)めて理解(りかい)した。もう、この惑星(わくせい)アルメスからは出られないことを。二度と、家族や友人たちに会うこともできないのだ。教授は緑の男に訊(き)いた。
「君は、一生(いっしょう)ここで研究を続けるのか? それで、満足なのか?」
「ああ、もちろんさ。ここには煩(わずら)わしいことは全くない。自分の研究に没頭(ぼっとう)できるんだ。最高の環境だよ。それに…」
 緑の男は声をひそめて言った。
「ここは閉ざされた場所じゃない。あなたにも、いずれ分かるときがくるはずだ」
 緑の男は、意味深(いみしん)な笑(え)みを浮かべて教授を見つめた。
<つぶやき>チップメル教授はこれからどうなるのでしょうか? そしてロボットは…。
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2017年05月01日