「空からきた少女」040

「幼なじみ」
 古ぼけた鳥居(とりい)をくぐり、道に出た。ここは田舎(いなか)町なので、歩いている人などいなかった。少し離れたところにある畑(はたけ)で、農作業をしている人が小さく見えるだけだ。
「家はどこ? 送って行くよ」少年は思い切って声をかけた。
「いえ…」少女はちょっと困った顔をして目を伏(ふ)せたが、少年の方をしっかりと見て、
「帰れます…。一人で帰れますから。ありがとう」
 少女は頭を下げるとにっこりと笑顔を見せて、そのまま背を向けて歩き出した。彼女の後ろ姿はどこか寂(さび)しげで、少年の心はざわついていた。少年は彼女とつないだ手を見る。まだ、彼女のぬくもりが残っているような、そんな気がした。
 そんな二人の様子(ようす)を木陰(こかげ)から見ていた者がいた。少女が離れていくのを見届(みとど)けてから、ゆっくりと少年に近づいて声をかけた。
「ねえ、大介(だいすけ)。いまの子、だれ?」
 少年は驚(おどろ)いて振り返った。そこにいたのは幼なじみの花代(はなよ)だ。
「知るかよ」大介はぶっきらぼうに答えた。
「こんなとこで何してたの?」花代は神社の方を見て言った。
「お前には関係ねえだろ。もう、うるせえなぁ」
「何よ。そんな言い方しなくても…」
<つぶやき>田舎では子供たちの遊び場はいっぱい。でも気をつけないといけないことも。
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2017年06月25日