「空からきた少女」041

「近づくもの」
 大介(だいすけ)は花代(はなよ)の言うことなど聞かずに、ぷいと逃げるように行ってしまった。
 この二人、以前はとても仲(なか)が良かった。何でも話せる関係だった。それが、大介の両親(りょうしん)が離婚(りこん)してからというもの、二人の関係(かんけい)もぎくしゃくしてしまった。花代は、前のように仲良くしたいと思っていた。でもそんな気持ちとは裏腹(うらはら)に、ひどいことを言ってしまう自分がいた。花代には大介の行き場のない気持ちを、どうすることもできないのだ。やるせない思いで、花代は大介を見送るしかなかった。
 ――はるか宇宙(うちゅう)の彼方(かなた)、天(あま)の川の方角(ほうがく)から近づいて来る光があった。まだ小さすぎて、地球からはそれを確認(かくにん)することは出来ない。発光体(はっこうたい)はものすごいスピードで太陽系に入り、次第(しだい)に速度(そくど)を落としていく。海王星(かいおうせい)、土星(どせい)の軌道(きどう)を通りすぎて木星(もくせい)の間近(まぢか)まで迫(せま)ったとき、燃(も)えるような光が消えていった。光の中から現れたのは、直径(ちょっけい)が二メートルにも満たない球体(きゅうたい)だった。その球体は銀色をしていて、太陽の光をキラキラと反射(はんしゃ)させていた。球体はさらに速度を落として、火星(かせい)へ向かって進んで行った。
 ちょうどその頃、火星に近づいていく探査機(たんさき)があった。機体には日の丸が描かれていて、日本が火星に送った初めての探査機だ。小型ながらも日本の技術の粋(すい)を集めて作られている。探査機は順調(じゅんちょう)に飛行を続け、ようやく火星の周回軌道に投入するところまでたどり着いた。日本中がその探査機を固唾(かたず)を呑(の)んで見守っていた。
<つぶやき>宇宙を目指すのはとても大変なこと。でもそこには大いなる夢とロマンが…。
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2017年07月13日