「空からきた少女」042

「火星探査機」
 日本の探査機(たんさき)が火星(かせい)に近づいていた。計算では間もなく周回軌道(しゅうかいきどう)に乗るはずだ。宇宙開発センターの管制室(かんせいしつ)では、探査機からの信号を今か今かと待ち構えていた。モニターを見つめていた担当者が声を上げた。
「信号を受信しました。軌道投入(とうにゅう)を確認。成功です!」
 静まり返っていた管制室が、一転(いってん)歓喜(かんき)の声に包(つつ)まれた。互(たが)いに握手(あくしゅ)をかわしたり、抱き合ったり、涙を流して喜ぶ人もいた。今までの長かった苦労が報(むく)われた瞬間だ。
 このミッションの責任者が声を上げた。
「みんな、ご苦労さま。だが、本番はこれからだ。気を引きしめて、それぞれの作業を進めてくれ。みんな、ほんとにありがとう!」
 ――宇宙空間を漂(ただよ)っている十数個の小さな物体があった。小惑星がぶつかった時に飛び散った星くずなのか…。大きなものでも二、三センチほどしかなかった。それが火星の引力(いんりょく)に引きよせられて、スピードを上げて近づいて来ていた。その行く手には、軌道に乗ったばかりの探査機が浮(う)かんでいる。地球からはそのことを知ることはできない。
 探査機をかすめるように、それは隕石(いんせき)となって火星の表面へ次々と落下していった。
 ――もうこれで危険は去ったかと思ったとき、一センチほどの塊(かたまり)が探査機に激突(げきとつ)した。そして、機体を突(つ)き抜けて地表へ落下していく。機体には大きな穴が開いてしまった。それと同時に、小さな爆発が起き探査機は機能を停止した。
<つぶやき>宇宙では何が起こるか分からない。それでも知りたいことは山ほどあります。
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2017年07月22日