「空からきた少女」022

「宇宙の同化」
 チップメル教授は何も答えられなかった。アールは先を続ける。
「事情はどうあれ、この国の科学者が関わっているわけですから。銀河連盟における我が国の立場を危(あや)うくしかねない問題なのです」
 教授はため息をついた。まさかこんな大事(おおごと)になるなんて。
「それで、私に何ができます?」教授は困惑して言った。「私に協力できることなんかありませんよ。だいいち、博士がどんな研究をしていたのか、まったく知らないんですから」
「あなたと同じ研究ですよ」アールはそう言うとまた薄笑いを浮かべた。「進化について研究していたんです。といっても、生物ではなく機械の進化ですがね」
「機械の進化?」チップメル教授は首をかしげた。
「ハンメル博士は、ある考えに取り憑(つ)かれていました。ひとつのシステムが全てを支配する世界。そこでは同じ価値観のもとで、戦争につながる争いもない。全宇宙の同化。博士は真剣に考えていたみたいですよ」
「そんなこと出来るわけがない」チップメルは叫んだ。「すべての種族を同化させるなんて。それは、侵略(しんりゃく)と同じじゃないですか」
「たしかにそうです。これは、平和の名のもとでの侵略に違いありません」
<つぶやき>違う価値観や考えがあるから、そこから新しいものが生まれてくるんです。
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2016年11月22日