「空からきた少女」023

「機械進化論」
「博士の目指す究極の世界。もし、それが実現していたらと思うと、ぞっとしますね」
 アールは楽しんでいるかのように言った。
 ハンメル博士が提唱(ていしょう)した機械進化論(しんかろん)。それは機械を進化させることで、この世界の秩序をより良い方向に導(みちび)くというものだ。この考えは、当時はまったく無視されていた。誰しも、実現は不可能だと思ったのだ。それは、今になっても変わることはなかった。だが、今回のことであらためて博士の研究資料を分析した結果、あながち絵空事(えそらごと)ではないとグリークの政府は判断したようだ。アールがここにやって来たのも、その対策のひとつなのだ。
「まさか、あの秘密兵器が…」チップメル教授は最悪のシナリオを想像した。
「そうかもしれません」アールは無表情に答えた。「われわれが入手した情報では、それを否定することはできない。もし、その兵器に進化の機能(きのう)が備(そな)わっていれば、この世界にとって大きな脅威(きょうい)となるでしょう」
「進化の機能…、それはどんなものなのですか?」
 チップメルは進化を研究する学者として、その言葉に好奇心をそそられた。
 アールはそれを見逃さなかった。「博士の論文の中にこんな記述(きじゅつ)がありました。機械に意志を与えると。つまり、その機械が自ら判断し行動できるようにする。そして、状況によって必要な機能を付け加えて増殖(ぞうしょく)させる。まるで生き物のようにね」
<つぶやき>現代の機械の進化は凄(すご)いです。あんなことや、こんなことができるんだから。
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2016年12月10日