「空からきた少女」045

「ニュース」
 勇太(ゆうた)は朝食を頬張(ほおば)りながら、テレビを食(く)い入(い)るように見ていた。ちょうど火星探査機のニュースをやっているのだ。昨日からその話題でみんなが騒(さわ)いでいた。
 記者会見の録画(ろくが)が始まった。計画の責任者は、故障(こしょう)の原因を調査中で復旧(ふっきゅう)に全力をつくしていると説明した。送られてきていた通信の記録を解析(かいせき)しているようだ。記者たちからは厳(きび)しい質問もあがった。巨額(きょがく)の資金が使われているので、これは仕方(しかた)のないことなのだが――。
 母親が戻って来ると、勇太は興奮(こうふん)しながら今のテレビの解説(かいせつ)を始めた。だが、母親は軽く相(あい)づちを打って受け流した。朝は、忙(いそが)しいのである。そうこうしている間に菜月(なつき)が部屋から飛び出してきて洗面所へ走り、慌(あわ)ただしく食卓に着いた。
 勇太は、今度は菜月を相手(あいて)にしゃべり始めた。でも菜月はまったく興味(きょうみ)がないのか、食事を口いっぱいに押し込んでいた。それを見ていた母親は呆(あき)れた顔をして、
「そんな食べ方はしないで。お行儀(ぎょうぎ)が悪いわよ」と注意した。
 勇太はあきらめたのか、食べ終わった食器を流しの方へ運んで行く。テレビのニュースは、いま話題(わだい)になっている映画の話へ移っていた。すると、菜月は食事の手を止めて、口をもぐもぐさせながらテレビを見つめた。この映画に出ている子役の娘(こ)が気になるようだ。
 菜月は思わず呟(つぶや)いた。「ああっ、この子、かわいいぃ。なんか、あこがれちゃうなぁ」
<つぶやき>子供たちはいろんなことに興味をもつものなのです。探究心は大切ですよね。
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2017年08月28日