「女子大生探偵アン&ユリ」

(再公開 2016/09/06)
 「絵画盗難事件」7
 翌日、屋敷の応接間に山本が座っていた。テーブルの上にはあの絵が置いてある。
「しかし、驚いたね。絵を売る気になるなんて」
 山本はにやつきながら、お金の入った封筒を綾佳の前に差し出した。綾佳は落ち着いた様子で、封筒の中のお金を確かめて言った。「残念ですけど、これではお売りできませんわ」
「なに言ってるんだ。約束した金は…」
「他に買い取りたいってうい方がいまして。この十倍の額を提示されましたの」
「十倍? 何を馬鹿な…。どこのどいつだ。そんなことを言ったのは」
 この時、応接間のドアが開いて、いかにもセレブといった女性が入って来た。大きな帽子と奇麗なドレスで着飾ってはいるが、何ともぎこちない動作である。
「あたくしですわ。あの…、あたし、この絵が気に入ってしまって」
「どこのお嬢さんか知らないが、この絵にそんな価値はない。素人は引っ込んでな」
 山本は女を睨みつけた。女は少したじろいだが前に進み出て、「じゃあ、どうしてあなたは、そんな価値のない絵を欲しがるんですか? 本当は、この中にある別の絵が…」
 男は突然立ち上がった。その顔には殺気がみなぎっている。女は驚いた拍子にバランスを崩し、尻餅をついてしまった。大きな帽子が彼女の頭から滑り落ちる。
「お前は…」女の顔を見て男は言った。「昨日の、生意気な女か」
 その女は、ユリだった。男は座り込んでいるユリの胸ぐらをつかんで言った。
「クソッ、バレちゃしょうがねえ。こんなに早く贋作が見破られるとは思わなかったよ。おかげで、手荒なまねをしなくちゃいけなくなった」
 男はポケットからナイフを取り出して、刃先をユリの目の前に突き出した。ユリは思わず目をつむった。男は綾佳に向かって、「さあ、絵を渡してもらおうか」
 綾佳は絵を持つと、ゆっくりと男の方に近づいた。そして、男の手がユリから離れると、綾佳は男に向かって絵を投げつけた。それを合図に、刑事たちが部屋になだれ込んで来る。まっ先に山科が男に飛びかかった。しかし、逆に殴り飛ばされてしまう。男は必死にナイフを振りまわす。動けなくなっているユリが目に入ると、男はやけくそになって彼女に切りかかった。次の瞬間、男の身体は宙を飛んでいた。
「助かったよ。おかげで怪我人を出さなくて済んだ」大熊警部は無骨につぶやいた。
「いや、あたしはユリを助けたかっただけで」アンが照れくさそうに答えた。
「誰に習ったか知らんが、警官にならないか? お前だったら、いい刑事になれるかもな」
 警部はそう言うと、答えも聞かずに帰って行った。ユリの介抱をしていた山科が、その後からばつが悪そうについて行く。二人を見送って、アンはユリの方へ走り寄った。
「なあ、あの若い刑事と知り合いか? どういう関係なんだよ」
「関係って?」ユリは顔を赤らめて、「そんなんじゃないわよ。ただの、幼なじみ」
「へーぇ、ユリって、ああいうへなちょこが好きなんだ」
 アンは嬉しそうにユリの頬を突っついた。ユリの顔はますます真っ赤になった。
<つぶやき>事件は無事に解決です。この後も、この二人の活躍は続くのでしょうか?
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2010年06月22日