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書庫 ブログ版物語801~
T:0801「等々力研究所(とどろきけんきゅうじょ)」
涼子(りょうこ)は再(ふたた)び押(お)しかけ助手(じょしゅ)として等々力教授(とどろききょうじゅ)、いや元教授(もときょうじゅ)の研究所(けんきゅうじょ)で働(はたら)くことになった。等々力(とどろき)を説得(せっとく)するのには時間(じかん)がかかったが、何(なん)とか承諾(しょうだく)させることに成功(せいこう)した。
これには村人(むらびと)たちの助(たす)けもあった。村(むら)の人(ひと)たちは彼女(かのじょ)のために研究所(けんきゅうじょ)の近(ちか)くの空(あ)き家(や)を提供(ていきょう)して、ことあるごとに涼子(りょうこ)のことを等々力先生(とどろきせんせい)に強(つよ)く勧(すす)めたのだ。村(むら)にとっても若(わか)い人(ひと)が住(す)んでくれることは良(い)いことだし、村(むら)の過疎化(かそか)は深刻(しんこく)な状況(じょうきょう)になっているから…。
涼子(りょうこ)は重(おも)い荷物(にもつ)をかかえながら研究室(けんきゅうしつ)に入(はい)って来(き)て言(い)った。
「教授(きょうじゅ)、荷物(にもつ)が届(とど)きましたけど。これ、何(なに)が入(はい)ってるんですか?」
等々力(とどろき)は何(なに)かの装置(そうち)を組(く)み立(た)てているところだった。彼(かれ)は作業(さぎょう)の手(て)を止(と)めることもなく返事(へんじ)をした。「ああ、分(わ)かった。そこら辺(へん)へ置(お)いといてくれたまえ。それと、わしは、もう教授(きょうじゅ)ではない。そういう呼(よ)び方(かた)はやめてくれないか」
「すいません。つい、大学(だいがく)の時(とき)の習慣(しゅうかん)が抜(ぬ)けなくて…。以後(いご)、気(き)をつけます」
涼子(りょうこ)は荷物(にもつ)を隅(すみ)へ置(お)くと、等々力(とどろき)のそばへ行(い)って作業(さぎょう)を見(み)つめながら、「今度(こんど)は何(なに)を作(つく)ってるんですか? 私(わたし)、助手(じょしゅ)なんですから、いい加減(かげん)教(おし)えて下(くだ)さい」
「まあ、そのうちな…。気(き)が散(ち)るから、向(む)こうへ行(い)ってくれないか」
「はぁい…。あっ、私(わたし)、これから義三(よしぞう)さんのとこ手伝(てつだ)いに行(い)ってきますからね」
涼子(りょうこ)は日銭(ひぜに)を稼(かせ)ぐために農家(のうか)の手伝(てつだ)いをしているのだ。押(お)しかけなので、ここでは給料(きゅうりょう)はもらえないから…。涼子(りょうこ)は小(ちい)さなため息(いき)をつくと、研究室(けんきゅうしつ)を後(あと)にした。
<つぶやき>ひさしぶりの登場(とうじょう)です。けして忘(わす)れていたわけではないんですよ。ほんと…。
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0806「コレクター」 ブログ版物語ID
T:0802「選(えら)ぶ楽(たの)しみ」
彼女(かのじょ)は陳列棚(ちんれつだな)に並(なら)んでいる商品(しょうひん)を見(み)て唸(うな)っていた。どっちにしようか悩(なや)んでいるようだ。そばで所在(しょざい)なげに立(た)っていた彼(かれ)は、うんざりしたような顔(かお)で決着(けっちゃく)がつくのを待(ま)っていた。だが、どうやら彼女(かのじょ)の決断(けつだん)にはまだ時間(じかん)がかかりそうだ。彼女(かのじょ)はひとり言(ごと)のように呟(つぶや)いた。
「あああっ、どっちが良(い)いかな? この色(いろ)は好(す)きなんだけど…、こっちのデザインも惹(ひ)かれちゃうのよねぇ。迷(まよ)っちゃうわ…。ねえ、どっちが良(い)いと思(おも)う?」
彼女(かのじょ)は、彼(かれ)の腕(うで)をつかんで引(ひ)き寄(よ)せて言(い)った。彼(かれ)は、まったく興味(きょうみ)が持(も)てないので面倒(めんど)くさそうに答(こた)えた。「そんなこと僕(ぼく)に訊(き)かれても、分(わ)かるわけないじゃないか」
「ちゃんと答(こた)えてよ。あなたの意見(いけん)が訊(き)きたいの。これと、こっちのなんだけど…」
「ええっ…。そうだな…、僕(ぼく)だったら、この右(みぎ)のやつかな。これ、良(い)いと思(おも)うよ」
「これ? こっちが良(い)いの? う~ん、そうかなぁ…。わたしは…」
「じゃあ、左(ひだり)のやつでもいいよ。どっちも素敵(すてき)じゃないか」
「そんなこと分(わ)かってるわよ。どっちも良(い)いから悩(なや)んでるんじゃない」
「そんなに悩(なや)むんなら両方(りょうほう)買(か)えばいいじゃないか」
「はぁ? なに言(い)ってるのよ。二(ふた)つは必要(ひつよう)ないでしょ。もういいわよ。あなたに訊(き)いたのが間違(まちが)いだったのね。また今度(こんど)にするわ。行(い)きましょ」
「えっ、買(か)わなくてもいいのかよ。じゃ、今(いま)までの時間(じかん)は何(なん)だったんだ?……」
<つぶやき>女性(じょせい)は選(えら)ぶ楽(たの)しさを知(し)っているんでしょうね。男性(だんせい)も我慢(がまん)する楽(たの)しさを…。
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T:0803「異星人(いせいじん)」
行(い)きつけの居酒屋(いざかや)。同期(どうき)で入社(にゅうしゃ)した彼女(かのじょ)たちの息抜(いきぬ)きの場(ば)になっていた。遅(おく)れてやって来(き)た静香(しずか)が、ふらふらした足(あし)どりで席(せき)について懇願(こんがん)するように言(い)った。
「もう、ダメ…。あたしの手(て)には負(お)えないわ。誰(だれ)か、助(たす)けてよぉ」
「どうしたの? しっかりしなさいよ。何(なに)があったのか話(はな)してみなさい」
「あいつら、同(おな)じ人間(にんげん)とは思(おも)えないわ…。もう、なに言(い)ってるのか全然(ぜんぜん)わかんないし」
「静香(しずか)って、新人(しんじん)の指導係(しどうがかり)になったのよね。どんな後輩(こうはい)たちなの? 教(おし)えてよ」
「もう、最悪(さいあく)よ。私(わたし)たちの後(あと)、6年間(ねんかん)も社員(しゃいん)の募集(ぼしゅう)してなかったじゃない。だから、やっと後輩(こうはい)ができるって楽(たの)しみにしてたのに…」
そこへ、静香(しずか)に声(こえ)をかけてくる者(もの)があった。それは、新入社員(しんにゅうしゃいん)の一人(ひとり)だ。彼(かれ)は平然(へいぜん)と言(い)った。「あの、明日(あした)のことなんだけど。ちょっといいすか?」
静香(しずか)は目(め)を丸(まる)くして訊(き)いた。「どうして…。わたしが、ここにいるのを…」
「簡単(かんたん)すよ。先輩(せんぱい)のスマホをGPSで探(さが)せるようにしといたんで。もうバッチリです」
「なに勝手(かって)なことしてるの? そんなことしたらダメじゃない。やめてよ」
「はい、じゃあ削除(さくじょ)しときます。で、明日(あした)なんですけど、俺(おれ)、ちょっと用(よう)があって、遅(おく)れてもいいすか? どうせ、早(はや)く行(い)っても仕事(しごと)ないし。じゃ、そういうことで」
一同(いちどう)は、唖然(あぜん)とするばかり。彼(かれ)は、そのまま居酒屋(いざかや)を出(で)て行(い)ってしまった。
<つぶやき>まさか、こんな人(ひと)はいないでしょ…。でも、こんな後輩(こうはい)がいたら大変(たいへん)そう。
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T:0804「状況不明(じょうきょうふめい)」
「わたしは、あなたが思(おも)っているような人間(にんげん)じゃないんです。もう、わたしのことはほっといて下(くだ)さい。話(はな)しかけないで…」
「でも…、僕(ぼく)は、あなたを見(み)ていると心配(しんぱい)で、ほっとけないんです。これはもう、運命(うんめい)です。僕(ぼく)とあなたが出会(であ)ったことは――」
「あたし、運命(うんめい)なんて信(しん)じません。だから、あなたとそういうことにはなりません」
「…そうですか、分(わ)かりました。でも、僕(ぼく)に何(なに)かできることはありませんか?」
「ありません、何(なに)も…。だから、もう――」
「僕(ぼく)は、あなたに幸(しあわ)せになってほしいんです。それだけです、それだけなんです」
「もう、行(い)きます。じゃ…」
「あの…。もし僕(ぼく)がいることで、あなたが不幸(ふしあわ)せを感(かん)じるなら、もう二度(にど)と、あなたの前(まえ)には現(あらわ)れません。あなたが幸(しあわ)せになるなら、僕(ぼく)はどうなってもかまわない」
「もう、やめて下(くだ)さい!」
「ほんとうに、僕(ぼく)にできることはありませんか? どんなことでも言(い)って下(くだ)さい…。あなたが幸(しあわ)せにならないと、僕(ぼく)は…、僕(ぼく)は困(こま)るんです」
「あなたには関係(かんけい)ないでしょ。…あなたって、ずるいです。どうして、そんな話(はなし)をするんですか? わたしに、どうしろと言(い)うの」
「ですから…。僕(ぼく)は、あなたが幸(しあわ)せになりさえすれば……。ほんとにそれだけなんです」
<つぶやき>二人(ふたり)はどういう関係(かんけい)なのか。状況次第(じょうきょうしだい)では、全(まった)く違(ちが)うお話(はなし)になりそうです。
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T:0805「しずく76~警察(けいさつ)」
神崎(かんざき)つくねはそれに答(こた)えて、「しずくは、あなたの親友(しんゆう)だった娘(こ)よ。みんなの記憶(きおく)から消(け)されてしまったけど、あたしの大切(たいせつ)な従姉妹(いとこ)でもあるわ。しずくは……」
つくねは突然(とつぜん)の頭痛(ずつう)に襲(おそ)われて、その場(ば)にしゃがみ込(こ)んだ。頭痛(ずつう)はすぐに治(おさ)まったが、つくねは何(なに)かのイメージを受(う)け取(と)ったようで、驚(おどろ)いた表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていた。
柊(ひいらぎ)あずみがすぐに駆(か)け寄(よ)って来(き)て、「ねえ、大丈夫(だいじょうぶ)? 何(なに)か――」
「いえ、平気(へいき)です。心配(しんぱい)しなくても…」つくねはそう言(い)うと、あずみの身体(からだ)につかまって立(た)ち上(あ)がった。その時(とき)、あずみの耳元(みみもと)にささやいた。
「これから、何(なに)があっても手(て)を出(だ)さないで。何(なに)もしないって約束(やくそく)して」
「えっ、なに? 何(なに)を言(い)ってるの…」あずみはつくねを見(み)つめた。
――突然(とつぜん)、屋上(おくじょう)へつながるドアが音(おと)を立(た)てて開(ひら)いた。そして、数人(すうにん)の男(おとこ)たちがドタドタとなだれ込(こ)んできた。瞬(またた)く間(ま)に、三人(さんにん)は男(おとこ)たちに囲(かこ)まれてしまった。あずみは、つくねたちをかばうように前(まえ)に立(た)った。一人(ひとり)の男(おとこ)があずみの前(まえ)に出(で)て来(き)て、
「神崎(かんざき)つくねは…。君(きみ)たちの中(なか)にいるだろ? 出(で)てきなさい」
あずみが答(こた)えて、「あなたたち、誰(だれ)なの? つくねをどうするつもり」
「我々(われわれ)は警察(けいさつ)だ。ある事件(じけん)の容疑者(ようぎしゃ)として、神崎(かんざき)つくねを捜(さが)している。御協力下(ごきょうりょくくだ)さい」
「事件(じけん)って…、つくねがどんな事件(じけん)に関(かか)わってるっていうの?」
つくねは、すっと前(まえ)に出(で)ると言(い)った。「あたしです。神崎(かんざき)つくねは…」
<つぶやき>これは突然(とつぜん)の展開(てんかい)です。今度(こんど)はつくねが狙(ねら)われたのでしょうか。それとも…。
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T:0806「コレクター」
とある場末(ばすえ)のバー。ほの暗(ぐら)い店内(てんない)のカウンターで一人(ひとり)で呑(の)んでいる若(わか)い女性(じょせい)。その女性(じょせい)の横(よこ)に中年(ちゅうねん)の男(おとこ)が座(すわ)った。バーテンに酒(さけ)を注文(ちゅうもん)すると、男(おとこ)は女性(じょせい)に話(はな)しかけた。
「見(み)かけない顔(かお)だね。ここは初(はじ)めてかい?」
「ええ、そうよ。旅行(りょこう)をしてるの、いろんな所(ところ)を見(み)て回(まわ)ってるのよ」
「そう、それはいい。…君(きみ)は、綺麗(きれい)な髪(かみ)をしてるね。とても艶(つや)があって、素敵(すてき)な黒髪(くろかみ)だ」
「ああ…、ありがとう。そんなこと言(い)われるの、初(はじ)めてだわ。うれしい」
「もしよかったら、君(きみ)の髪(かみ)に、ふれてもいいかな?」
男(おとこ)は、女性(じょせい)の長(なが)い髪(かみ)に手(て)を伸(の)ばし一束(ひとたば)すくい取(と)ると、その匂(にお)いを嗅(か)ぐように顔(かお)を近(ちか)づけた。そして、女性(じょせい)の耳元(みみもと)でささやいた。
「これから僕(ぼく)と付(つ)き合(あ)わないかい? 面白(おもしろ)いものを見(み)せてあげるよ」
女性(じょせい)は突然(とつぜん)立(た)ち上(あ)がると、男(おとこ)の胸倉(むなぐら)をつかんで言(い)った。
「警察(けいさつ)よ! あなたを逮捕(たいほ)します」
それを合図(あいず)に、数人(すうにん)の客(きゃく)が立(た)ち上(あ)がり男(おとこ)に拳銃(けんじゅう)を向(む)けた。男(おとこ)は驚(おどろ)いて手(て)をあげて、
「ちょっと、待(ま)ってくれ。俺(おれ)は、別(べつ)に、何(なに)もしてないだろ…」
女性(じょせい)は男(おとこ)の腕(うで)を締(し)め上(あ)げて、「女性(じょせい)の髪(かみ)を切(き)り取(と)って殺(ころ)すなんて、最低(さいてい)な男(おとこ)ね」
男(おとこ)は、有無(うむ)も言(い)わさず連行(れんこう)された。――その様子(ようす)を、バーの隅(すみ)で見(み)ていた男(おとこ)。かすかに笑(え)みを浮(う)かべた。テーブルに隠(かく)された男(おとこ)の手(て)は、女性(じょせい)の髪(かみ)の束(たば)を愛撫(あいぶ)していた。
<つぶやき>怖(こわ)いです。連続殺人(れんぞくさつじん)なのかな? 女性(じょせい)を口説(くど)く時(とき)は、間違(まちが)われないようにね。
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