超短編戯曲一覧

001「伝説・寿椅子」

ZZ001

ある会社の給湯室。新入社員の理恵に仕事を教えている女子社員の綾佳。
綾佳「ここが給湯室ね。お茶の葉とかコーヒーはこの棚にあって、湯呑みとかカップは後ろの食器棚に入ってるから」
理恵「はい」
綾佳「あと、分かんないことがあったら、いつでも訊いて。教えてあげるから」
理恵「あの…。私、何かしましたか?」
綾佳「何かって?」
理恵「だって、私の前に座ってる先輩が、怖い顔で私を見てるんです」
綾佳「ああ、お局様ね。(あたりを気にして小声で)亀山先輩に逆らっちゃダメよ。あの人に睨まれたら、地獄の底に突き落とされるから」
理恵「ええっ…、そんな。私、ちゃんと挨拶もしたし、なにも…」
綾佳「私が思うに、あなたの使ってる椅子が原因かもね」
理恵「椅子?」
綾佳「この会社には、寿椅子っていう伝説があってね。その椅子に女子社員が座ると、三ヶ月以内に恋人ができて、一年以内に寿退社できるって言われているの」
理恵「ほんとですか? そんなことあるはずないですよ」
綾佳「だって、一年くらい前にこの部署に来た子がね、昨日、寿退社したのよ。来週、結婚式を挙げるんだって」
理恵「え? でも、それは…」
綾佳「その子の椅子。いま、あなたが使ってるやつよ」
理恵「ええっ…」
綾佳「亀山先輩は、あなたの椅子を寿椅子だと思ってるのよ。きっと、狙ってたんだわ。今朝だって、いつもよりも早く出社してたし。でも…、どうして椅子を取り替えなかったのかな?」
理恵「あっ! 私、今朝、早く来すぎて、まだ誰もいなかったから、あの椅子に座って…」
綾佳「それ、ほんと?」
理恵「ええ。そしたら、亀山先輩が走り込んできて…。なんか、すごい顔で…」
綾佳「ああ、やっちゃったわね」
理恵「どうしよう…」
突然、亀山が給湯室を覗き込んで、
亀山「いつまでかかってるの。早く仕事に戻りなさい。(理恵を睨んで)佐々木さん、早く一人前になってよね。でないと、私…」
亀山、薄笑いをうかべて立ち去る。
理恵(慌てて)「私、今から椅子を取り替えてもらってきます」
綾佳「もう遅いわよ。伝説では持ち主になった人が寿退社しない限り、次の持ち主にはなれないらしいから」
理恵「そんなあ…」
<つぶやき>こんな椅子があったら、私も…。でも、これって神頼みですよね。
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2021年05月14日

002「食いしん坊のルームメイト」

ZZ002

とあるアパート。越してきたばかりなのか、段ボール箱などが積み上げられている。真一が段ボール箱を一つずつ開けながら、
真一「これは、台所用品と…。あれ…、これ捨てようと思ってたのに、何でこんなところにあるんだ。ああ…、もうぐちゃぐちゃだな。どこに何が入ってるのか分かんないよ」
真一が積み上げてある段ボール箱をどかすと、部屋の隅に女が座っていた。
真一「(驚いて)わぁ! えっ…、だれ? 何でこんなところに…」
幽子「初めまして。私、幽子って言います。どうぞよろしく」(三つ指ついておじぎをする)
真一「ゆうこ? えっ…。どっから入ってきたんだよ」
幽子「私は、ずっとここに居たよ。今日から、ルームメイトだね」
真一「はぁ、なに言ってるの? ここは俺の部屋だから。早く、出てけよ」
幽子「それは、ちょっと無理かなぁ。だって、ここから出られないし」
真一「えっ、なに言ってんだよ。いいから、出てけよ」
真一は幽子を外に追い出し、玄関の扉を閉める。閉めてすぐに、扉を叩く音がする。
真一「まったく、いい加減にしろよ!」
扉を開ける真一。外には別の女が立っていた。
希美「なに…。おどかさないでよ」
真一「のぞみ…。えっ、どうして…」
希美「一人じゃ大変だと思って、手伝いに来たんじゃない。それに、これ。引っ越しといえば、蕎麦でしょう。そこのコンビニで買って来ちゃった」
真一「あっ、ありがとう。あの…、いまさ、誰かに会わなかった?」
希美「誰かって?」
真一「いや…、別にいいんだ。さあ、入って。どうぞ」
希美「はい、おじゃましまーす。なんだ、全然片付いてないじゃない」
真一「だって、さっき始めたばかりだからさ」
希美「よし。じゃあ、やっつけちゃうわよ」
希美はコンビニの袋をそのまま冷蔵庫にしまう。二人は、片付けを始める。
しばらくすると、冷蔵庫の方で蕎麦をすする音がする。希美がそれに気づいて、
希美「だれ?(近づいて)何してるのよ。それ、私が買ってきたやつじゃない!」
幽子「初めまして。私、幽子って言います。どうぞよろしく」(三つ指ついておじぎをする)
希美「よろしくって? 真一! 誰よ、この人。何でここにいるのよ」
真一「えっ? あっ!(希美に)いや、あの…。俺にもよく分かんないんだけど…」
幽子「あの…。私のことは気にしないで。邪魔とかしませんから」
希美「そう言うことじゃなくて。(怒って)真一、ちゃんと説明してよね」
幽子「すいません。これ、もう一つ食べてもいいですか? もう半年も何も食べてなくて。前にいた人は、料理とか全然しない人だったんです。だから、追い出しちゃった。真一は、ちゃんと料理作ってね」
幽子は冷蔵庫のなかに消えていく。茫然と立ちつくす二人。
<つぶやき>引っ越しする時は気をつけましょう。先住者がいるかもしれません。
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2021年05月20日

003「小悪魔的微笑」

ZZ003

小さな結婚式場で、受付をすることになった初対面の二人。
さやか「ねえ、花嫁のドレス、見た? 超ダサくない」
山本「そんな…。(小声で)他のお客さんに聞こえますよ」
さやか「別にいいじゃん。どうせ、ちんけな結婚式なんだから」
山本「ダメですって、そんなこと言っちゃあ」
さやか「正貴も、何であんなブスにしたんだろう」
山本「ブスって。姫野さんはブスじゃないですよ」
さやか「あんた、あの女のなに?」
山本「なにって…、友達ですよ」
さやか「私、むかし正貴と付き合ってたから、あいつのこと何でも知ってんだよね」
山本「えっ!?」
さやか「そんなに驚かなくてもいいじゃん。むかしのことよ」
山本「昔って?」
さやか「あの二人、ぜったい別れるね。一年もたないんじゃないのかなぁ」
山本「そんなことないですよ。別れるなんてことは…」
さやか(山本の顔を覗き込み)「あんたさ、もしかしてあの女のこと好きなの?」
山本(動揺して)「えっ、そ、そんなことは…」
さやか「やっぱりそうなんだ。あんな女、やめときなよ。どこがいいの? どうせ今日だって、無理やり受付係を押しつけられたんでしょう」
山本「いや、それは…」
さやか「ねえ、私と付き合わない?」
山本「はい?」
さやか「いいじゃない。あんた、どうせ他に彼女いないんでしょう」
山本「あのね、突然そんなこと言われても…」
受付に客がやって来る。
さやか「どうも、ありがとうございます。こちらにご記入下さい。(山本に微笑みかける)もうすぐ始まりますので、あちらの方でお待ち下さい」
客が受付を離れていく。山本はどうしたものかと考え込んでいる。
さやか「ねえ、これ終わったら、二人で抜け出さない?」
山本「そんな、ダメですよ」
さやか「いいじゃん、デートしようよぉ」
山本(怒って)「もう、冗談は止めて下さい。僕は…」
さやか「わあっ、かわいいーぃ。じゃあ、式が終わってからでいいよ」
山本「なんで、僕なんかと付き合うんですか。きょう会ったばかりなのに…」
さやか「だって、あんたみたいな人、初めてなんだもん。なんか、感じるものがあるのよ。きっと、私のタイプなんだわ。そんな難しい顔しないで。お試し期間ってことで、よろしくねっ~」(とても可愛らしく微笑みかける)
<つぶやき>この男、いじられるタイプなの? 優しくしてあげてくださいね。
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2021年05月28日

004「優しい嘘」

ZZ004

結婚十数年目の夫婦。朝食の情景。
和子(お茶を出して)「ねえ、昨夜も遅かったみたいね」
孝夫(ちょっと動揺)「えっ…、そうだね」(ご飯を頬張る)
和子(夫の前に座り顔色をうかがいながら)「仕事、そんなに忙しいの?」
孝夫(ご飯をのみ込んで)「うん…、ちょっと忙しいかな」
和子「へーえ、そうなんだ」
孝夫「なに? なんか…」
和子「別に…。そうだ、昨夜、山田さんから電話があったわよ」
孝夫「えっ、山田から? なんて…」
和子「さぁ。でも、あなた、会社にいたのよね。なんで家に電話してきたのかな?」
孝夫「昨日はさ、外回りしてて、直帰するって言っといたから。たぶんそれで…」
和子「あれーぇ。でも、山田さん、あなたは定時で帰ったって言ってたわよ」
孝夫「あれっ、おかしいな…」
中学生の娘・あずさがあわてて飛び込んで来て、食卓に座る。
あずさ「お母さん! 今日から朝練が始まるから早く起こしてって言ったじゃないの」
和子「そうだった?」
あずさ(食事を口いっぱいに入れて)「もう、遅れちゃうよ。先生に、怒られるんだから」
和子「遅くまで起きてるからでしょう。もっと早く寝なさいよ」
あずさ(食べながら)「いろいろやりたいことがあるのよ。一日、三十時間あったらなぁ」
孝夫(笑いながら)「それは、いくらなんでも無理だろう。(和子に)なあ…」
和子は孝夫に冷たい目線を向ける。孝夫は、目をそらして食事をつづける。
あずさ(食べ終わって、口をもぐもぐさせながら)「もう、行く。やばいよ」
和子「はい、お弁当。残さないでよ」
あずさ「わかってるって。いつも、ありがとうね。行ってきまーす」
あずさ、飛び出していく。和子は食卓に戻り、
和子「で、どこに行ってたの?」
孝夫「だから、仕事だよ。得意先を回ってて…」
和子「あなたのシャツ、いい匂いがしてたけど。誰かと、高級料理でも食べたのかな?」
孝夫「そんなことないよ。気のせいだって。ははは…」
和子「あなた! 家族のあいだで嘘はつかないって約束したよね」
孝夫「嘘なんか…。(間)わかったよ。実は…、篠原のところで料理を習ってるんだ」
和子「篠原…。あなたの親友で、あの高級レストランのオーナーシェフの…篠原さん?!」
孝夫「そうだよ。今度の結婚記念日、そのレストランで、僕が作った料理を食べてもらおうかなって…。もう、びっくりさせようと思ってたのになあ」
和子「えっ、ごめんなさい。私…。あーあ、そういうことは早く教えてよ。新しい服、買わないと。ねっ、いいでしょう? わぁ、楽しみだな。どんなドレスにしようかな…」
孝夫「いや、そこまでしなくても…。あずさも連れて行くんだし」(困った顔で見つめる)
<つぶやき>なんだかんだと言っても、家族円満が一番ですよね。うちは大丈夫かな?
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2021年06月03日

005「SINOBI」

ZZ005

○ 夕方のとある商店街
閑散として人通りのない商店街。店主たちが不安そうに通りを見ていた。
ナレーション「突然現れたスーパーにお客を奪われ、存亡の危機に瀕した商店街。だが、ここには人知れず暮らす忍びの者たちがいた。これは現代に生きる忍びの物語である」
○ 質屋の藏の二階
夜。音もなく集まってくる者たち。それぞれ仕事着を身につけ、道具を携えている。
八百屋「お頭、やっぱりあのスーパー、変ですよ。仕入れ先がまったくつかめない」
質屋の頭「運送屋の情報では、あちらこちらに出没して、荒稼ぎをしているようだ」
荒物屋「このままじゃ、この商店街も潰されちまいますよ。早く手を打たないと」
ミスド店員「えーっ、そんな。わたし、せっかくいいバイト見つけたのにぃ」
魚屋店員「お頭の前でなんて口のきき方するんだ。まったく、今どきの若いもんは…」
本屋「なに言ってんだ。お前とたいして違わねえだろう。お頭、これからどうします?」
質屋の頭「今夜、忍び込もう。いいか、どんな相手か分からんが、油断するんじゃないぞ」
   真剣な表情の面々。緊張が走る。
○ スーパーの店内
非常灯がついている薄暗い店内。あちこちに散って調べていた忍びたちが集合する。
米屋「お頭、ここの米、事故米が混じってますよ」
肉屋「それに、冷凍肉のラベル、張り替えてますぜ。どう見ても産地偽装だ」
本屋「金庫の中には裏帳簿がありました。どうやら、盗品も扱ってますね」
   突然、照明がつき、男たちがまわりを取り囲んだ。手には武器を持っている。
スーパー社長「おやおや、こんな大きなネズミがいたとはな」
魚屋店員「お前らな、こんな商売していいと思ってんのか!」
スーパー社長「ばれちゃ仕方がない。(子分たちに)生かして返すんじゃねえぞ!」
男たちは剣を振るい襲いかかる。忍びたちは、それぞれの道具で応戦する。菜箸やおたま、竹ぼうきなど。ミスド店員が男たちに囲まれる。魚屋店員が助け出す。
魚屋店員「お前、なにやってんだよ。ちゃんと修業してないだろう」
ミスド店員「うるさいなぁ。ちょっと、手元がくるっただけよ」
ミスド店員はフォークの手裏剣を敵に投げつける。形勢は忍びたちに傾く。社長が合図をすると、いたるところで爆発が起き、店内に煙が充満していく。
○ スーパーを見下ろす丘の上
忍びたちが炎上しているスーパーを見下ろしている。傷を負ったものもいる。
本屋「あいつらは、いったい何者だったんでしょう?」
質屋の頭「俺たちと同じ忍びだろう。また、現れるかもしれんな」
ミスド店員「そんときは、わたしがまたやっつけてやるわよ」
魚屋店員「よく言うよ。やられそうだったくせに」
ミスド店員はふくれ顔で魚屋店員を追いかける。みんなは笑顔で二人を見つめる。
<つぶやき>影ながら働いている人たちがいるかもしれません。あなたの隣にも…。
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2021年06月09日

006「人生の選択」

ZZ006

お洒落なバーで、若い男女が人生の大切な場面をむかえていた。
真理「ねえ、いつもの居酒屋でよかったのに。ここ、高いんじゃないの?」
 「あのさ、今日は…。静かなところがいいかなと思って」
真理「えっ? どうしたのよ。なんか、いつものみつぐじゃなぁい」
 「俺たち、もう付き合い始めて二年だろ。そろそろ…」
真理「もうそんなに。早いよね。私も、もうお肌の曲がり角かな。なんて」
 「だから、その…。ここらへんで、けじめというか…」
真理「なに? もしかして、他に好きな人できちゃったの?」
 「そうじゃなくて…。ぼ、僕と…。け、けっ…、結婚しよう!」
真理(結婚と聞いて、すぐに即答する)「無理」
 「えっ? なんで…」
真理「私たち、このままでいいじゃない。結婚なんて…」
 「だって、俺たち好きあってるんじゃ…」
真理「そうよ。私、みつぐのこと大好きよ。でも、結婚は無理なの」
 「わけ分かんないよ。大好きだったら、結婚ってことになるでしょう」
真理「オダマリ!」
 「えっ…」
真理「私、結婚したら尾田真理になるのよ。そんなの、ありえないでしょう」
 「はぁ? なに言ってるの。いい名前じゃない、尾田真理って」
真理「じゃあ、もし子供ができて、病院の待合室で<オダマリ!>を連呼されても平気でいられるの? 私は、無理。恥ずかしくて耐えられない」
 「そんなこと、こだわることじゃないでしょう。俺たちの愛にくらべたら…」
真理「だったら、みつぐが婿養子に来てよ。どうせ次男なんだから、いいでしょう」
 「それは…。その、養子は…」
真理「こっちはお姉ちゃんと二人だから、どっちかが継がないといけないんだから」
 「そんなこと言っても、俺も、無理だよ」
真理「なんでよ。私のこと愛してるんでしょう。だったら、それくらい…」
 「<タダのみつぐ>だよ。なんか、嫌なんだよなぁ」
真理「なによ。只野のどこが悪いのよ。只野家をバカにしてるの?」
 「だって、いままでさんざん君に貢いでるのに、それが名前になるんだよ」
真理「オダマリ! 私より名前にこだわるわけね。もういい、別れましょう」
 「えっ! なに言ってるんだよ。最初にこだわったのは君じゃないか」
二人とも黙り込んでしまう。なんともいやな間。
二人で 「あの…」(ばつの悪い間)
真理「私…。やっぱり、別れたくない。みつぐのこと大好きだから…」
 「僕も、真理のとこ大好きだよ。もう一度、養子のこと考えてみるから…」
二人、手を取り見つめ合う。この二人の未来は明るいのか?
<つぶやき>こんなことはそうあることでは…。でも、名字が変わるって変な感じかも。
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2021年06月15日

007「専属天使」

ZZ007

一人暮らしの男の部屋。男はデートに出かけようとして急いでいた。
安田「財布も持ったし、ハンカチOK。プレゼントもあるし…」
玄関のチャイムが鳴る。
安田「誰だよ、こんな時に…」
男は玄関を開ける。白いワンピースの若い女性が立っていた。
安田「えっ、どなたですか?」
スージー「あなた、安田さん?」
安田「はい。そうですけど…」
スージー「あーっ、やっと見つけた。この住所、分かりづらい。迷っちゃったじゃない」
安田「えっ?」
スージー「今日から、あなたの担当になったから、よろしく」(部屋に上がり込んでいく)
安田「ちょっと待てよ。なに、担当って?」
スージー「だから…。(めんどくさそうに)神様の命令で、あなた専属の天使になったの」
安田「天使ってなに? 悪いけど、これから出かけるから、帰って来んないかな」
スージー「あの女はやめときなよ。運命の相手じゃないから」
安田「なに勝手なこと言ってるんだよ。僕が彼女と付き合うために、どれだけ努力を重ねてきたか。彼女はね、もう僕にはもったいないくらい、素晴らしい人で…」
スージーはテーブルの上の箱からシュークリームを出して美味しそうに食べ始める。
スージー(食べながら)「そうよ、不釣り合いなの。分かってるじゃない」
安田(気づいて)「あっ! なに食べてんだよ。それは彼女のために買っておいた…」
スージー「これ、美味しいね。私、気に入っちゃった」
安田(箱を覗いて)「おまえ、全部食べたな。これを買うのに、何時間並んだと思ってんだよ。どうしてくれるんだ。今日、買っていくって約束して…」
スージー「もう、いいじゃん。どうせ、別れるんだから」
安田「おまえ、本当に天使か? 天使がこんなことしていいのかよ」
スージー「うーん、別にいいんじゃないの。天使にそんな決まりはないしぃ」
安田「嘘だ! おまえ、天使なんかじゃないだろう。誰に頼まれた? 言ってみろ!」
スージー「もう、うざい。そんなんだからモテないのよ」
安田「だったら、天使だっていう証拠を見せろ。天使の輪っかも羽根もないじゃないか」
スージー「そんなのあるわけないじゃん。それは、人間の作り話よ」
安田「もういい。出てってくれ。出てけよ!」
スージー「私も出て行きたいんだけど、これも仕事だしぃ。当分ここにいるから」
安田「当分って、なんだよ。まさか、ここに住みつくつもりか?」
スージー「しかたないじゃない。あなたが運命の人に出会って、幸せをつかむのを見届けなきゃいけないしぃ。いいじゃない、こんな可愛い天使と一緒にいられるのよ」
安田「あのな、どこが可愛いんだよ。だいたいな…」
スージー「ねえ。これ、毎日食べたい。でないと私、運命の人、教えてあげない」
<つぶやき>これは幸運なの、不幸なの。でも、運命の人が分かるんだよ。よくない?
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2021年06月21日