003「小悪魔的微笑」

小さな結婚式場で、受付をすることになった初対面の二人。
さやか「ねえ、花嫁のドレス、見た? 超ダサくない」
山本「そんな…。(小声で)他のお客さんに聞こえますよ」
さやか「別にいいじゃん。どうせ、ちんけな結婚式なんだから」
山本「ダメですって、そんなこと言っちゃあ」
さやか「正貴も、何であんなブスにしたんだろう」
山本「ブスって。姫野さんはブスじゃないですよ」
さやか「あんた、あの女のなに?」
山本「なにって…、友達ですよ」
さやか「私、むかし正貴と付き合ってたから、あいつのこと何でも知ってんだよね」
山本「えっ!?」
さやか「そんなに驚かなくてもいいじゃん。むかしのことよ」
山本「昔って?」
さやか「あの二人、ぜったい別れるね。一年もたないんじゃないのかなぁ」
山本「そんなことないですよ。別れるなんてことは…」
さやか(山本の顔を覗き込み)「あんたさ、もしかしてあの女のこと好きなの?」
山本(動揺して)「えっ、そ、そんなことは…」
さやか「やっぱりそうなんだ。あんな女、やめときなよ。どこがいいの? どうせ今日だって、無理やり受付係を押しつけられたんでしょう」
山本「いや、それは…」
さやか「ねえ、私と付き合わない?」
山本「はい?」
さやか「いいじゃない。あんた、どうせ他に彼女いないんでしょう」
山本「あのね、突然そんなこと言われても…」
受付に客がやって来る。
さやか「どうも、ありがとうございます。こちらにご記入下さい。(山本に微笑みかける)もうすぐ始まりますので、あちらの方でお待ち下さい」
客が受付を離れていく。山本はどうしたものかと考え込んでいる。
さやか「ねえ、これ終わったら、二人で抜け出さない?」
山本「そんな、ダメですよ」
さやか「いいじゃん、デートしようよぉ」
山本(怒って)「もう、冗談は止めて下さい。僕は…」
さやか「わあっ、かわいいーぃ。じゃあ、式が終わってからでいいよ」
山本「なんで、僕なんかと付き合うんですか。きょう会ったばかりなのに…」
さやか「だって、あんたみたいな人、初めてなんだもん。なんか、感じるものがあるのよ。きっと、私のタイプなんだわ。そんな難しい顔しないで。お試し期間ってことで、よろしくねっ~」(とても可愛らしく微笑みかける)
<つぶやき>この男、いじられるタイプなの? 優しくしてあげてくださいね。
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2021年05月28日