005「SINOBI」

○ 夕方のとある商店街
閑散として人通りのない商店街。店主たちが不安そうに通りを見ていた。
ナレーション「突然現れたスーパーにお客を奪われ、存亡の危機に瀕した商店街。だが、ここには人知れず暮らす忍びの者たちがいた。これは現代に生きる忍びの物語である」
○ 質屋の藏の二階
夜。音もなく集まってくる者たち。それぞれ仕事着を身につけ、道具を携えている。
八百屋「お頭、やっぱりあのスーパー、変ですよ。仕入れ先がまったくつかめない」
質屋の頭「運送屋の情報では、あちらこちらに出没して、荒稼ぎをしているようだ」
荒物屋「このままじゃ、この商店街も潰されちまいますよ。早く手を打たないと」
ミスド店員「えーっ、そんな。わたし、せっかくいいバイト見つけたのにぃ」
魚屋店員「お頭の前でなんて口のきき方するんだ。まったく、今どきの若いもんは…」
本屋「なに言ってんだ。お前とたいして違わねえだろう。お頭、これからどうします?」
質屋の頭「今夜、忍び込もう。いいか、どんな相手か分からんが、油断するんじゃないぞ」
   真剣な表情の面々。緊張が走る。
○ スーパーの店内
非常灯がついている薄暗い店内。あちこちに散って調べていた忍びたちが集合する。
米屋「お頭、ここの米、事故米が混じってますよ」
肉屋「それに、冷凍肉のラベル、張り替えてますぜ。どう見ても産地偽装だ」
本屋「金庫の中には裏帳簿がありました。どうやら、盗品も扱ってますね」
   突然、照明がつき、男たちがまわりを取り囲んだ。手には武器を持っている。
スーパー社長「おやおや、こんな大きなネズミがいたとはな」
魚屋店員「お前らな、こんな商売していいと思ってんのか!」
スーパー社長「ばれちゃ仕方がない。(子分たちに)生かして返すんじゃねえぞ!」
男たちは剣を振るい襲いかかる。忍びたちは、それぞれの道具で応戦する。菜箸やおたま、竹ぼうきなど。ミスド店員が男たちに囲まれる。魚屋店員が助け出す。
魚屋店員「お前、なにやってんだよ。ちゃんと修業してないだろう」
ミスド店員「うるさいなぁ。ちょっと、手元がくるっただけよ」
ミスド店員はフォークの手裏剣を敵に投げつける。形勢は忍びたちに傾く。社長が合図をすると、いたるところで爆発が起き、店内に煙が充満していく。
○ スーパーを見下ろす丘の上
忍びたちが炎上しているスーパーを見下ろしている。傷を負ったものもいる。
本屋「あいつらは、いったい何者だったんでしょう?」
質屋の頭「俺たちと同じ忍びだろう。また、現れるかもしれんな」
ミスド店員「そんときは、わたしがまたやっつけてやるわよ」
魚屋店員「よく言うよ。やられそうだったくせに」
ミスド店員はふくれ顔で魚屋店員を追いかける。みんなは笑顔で二人を見つめる。
<つぶやき>影ながら働いている人たちがいるかもしれません。あなたの隣にも…。
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2021年06月09日