読切物語一覧

「結婚の条件」

(再公開 2017/02/24)
 高級ホテルで開かれたパーティー。ここに集まっているのは、いずれも劣らぬセレブな人たちばかりだ。高級ブランドで着飾った人たちは、その会話もハイセンスで綾佳(あやか)たちには全くついていけなかった。
「ダメだわ。何話してるのか全然(ぜんぜん)分かんない」愛実(まなみ)が呟(つぶや)いた。
 ミヤコは綾佳に駆け寄り泣きついた。「ねえ、もう帰ろうよ」
「何言ってるの。せっかく招待状を手に入れたのに、このまま手ぶらで帰れるわけないでしょ。ちまちまと婚活やるより、ここで一発逆転ホームランを打つって決めたじゃない」
「そうだけど…。私たちにはやっぱりハードルが高すぎるわよ」
「適当(てきとう)に相づちうって、笑ってれば大丈夫よ。向こうだって同じ人間なんだから」
「ねえ、あの人見て」愛実が二人に近づきささやいた。
 愛実が指さした先には、ちょっと風変わりな男がいた。全く時代後れのスーツを着て、誰かと会話をすることもなく会場内をフラフラと歩いている。しばらく見ていると、女性の後ろに回ってじっと何かを見つめているようだ。
 ミヤコが信じられないという顔をして、「ねえ、あの人お尻を見てるんじゃない」
「そうよ。絶対、間違いないわ」愛実が決めつけるように言った。
「ちょっと、そんなのほっときなさいよ」
 綾佳は二人の手を取り言った。「あたしたちには、やるべきことがあるでしょ」
「あっ、やばいやばい」愛実が二人に耳打ちする。「こっちへ来るわよ」
 綾佳が見たときには、男は三人の間近に迫っていた。綾佳たちはなすすべもなく、じっと男が去って行くのを待った。だが、男は彼女たちの周りをゆっくりとまわり始めた。間違いなく、彼女たちのお尻を見比べているようだ。
 たまらなくなった綾佳が、男の前に立ちはだかって言った。
「ちょっと、さっきから何してんのよ」
 男は少しも動ずることなく、綾佳の顔をじっと見つめた。綾佳も負けずに、と言いたいところだが、内心はドキドキ状態である。
「何を怒っておられるのですか?」男は礼儀正しくささやいた。
「別に怒ってなんか…。ただ、ジロジロ見ないで下さい」
「ああ、それは失礼しました。私、お相手を捜しておりまして」
「捜すって何よ。あそこを見てるだけじゃない」
「あそこ? それは申し訳ない。我が家の家訓(かくん)なんです。美しいお尻の女性を妻とせよ」
「何なのよ。そんなんで結婚を決めようってわけ」
「いけませんか? あなた方だって、男性の顔で決めてるじゃありませんか」
「あたしは違うわよ。そんなんで決めてないわ」
「それは頼もしい」男はにっこり笑って、「ぜひ、私とお付き合い願えませんか」
「はぁ? 何なんですか。もう、いい加減にして下さい」
「実は、あなたのお尻がいちばん美しいものですから」
 綾佳は男の目を見すえて言った。「あなた、年収はいかほどかしら?」
<つぶやき>伝統と格式ある家では、信じられない条件で嫁を決めているのかもしれない。
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2012年08月10日

「ライバル出現」

(再公開 2017/05/08)
「あたし、今日は帰りたくないな~ぁ」
 智子(ともこ)のこの甘い言葉で、今までしぶっていた紀夫(のりお)の気持ちがぐらついた。そして、ついに智子は彼のマンションへお邪魔することに…。この日をどれだけ待ったことか。
 紀夫は真面目で優しくて、性格は申し分なかった。仕事だって堅実(けんじつ)な会社で、年収も悪くはない。顔は美男子とまでは言えないが、全てがそろっている男なんてそうそう見つかるはずはないし、白馬の王子が現れるなんてあり得(え)ない。智子は現実的な女なのだ。
 あと、確認すべきことは彼の私生活だ。外面(そとづら)だけ良い男はいっぱいいる。変な趣味をもっていたり、妙なこだわりのある男だと、結婚したあと苦労することになるかもしれない。それを見きわめるには、彼の部屋を覗(のぞ)くのが一番いいのだ。それも、不意打(ふいう)ちで…。まさに、今日がその日になったわけだ。お泊まりの準備も万全だし、どういう状況になっても大丈夫。彼女は、準備を怠(おこた)らない女でもある。
 彼のマンションは悪くはなかった。彼の年収から考えても、背伸びをせずに経済観念(けいざいかんねん)もしっかりしている。部屋の中は予想以上に奇麗に片づいていた。ここまできっちりしていると、何だかこっちも気分がいい。彼がお茶の支度をしている間、智子は部屋の中を見渡した。どうやら、いかがわしいものはなさそうだ。でも、そういうものは人目につく場所には置かないもの。結論を出すのは早すぎるわ。
 二人は、たわいのない話でしばらく談笑(だんしょう)した。そのうち、何となく無口になって、お互いの目と目が合う。何となく良い雰囲気。彼が少しずつ近寄って来て、どちらからともなく、顔を近づける。まさにその瞬間、部屋の中が真っ暗になった。
「なに? どうしたの? いやだ」誰もがする反応を智子はした。
「あれ? 停電かな。ちょっと待ってて」
 紀夫はそう言うと手探りで彼女から離れて行った。彼はすぐに懐中電灯をつけると、ブレーカーを確認したり、動揺する様子もなかった。けっこう頼もしいんだ。智子は彼の知らなかった一面を見ることができた。これは、収穫である。彼はそのまま外へ出ていった。
 外の方から彼の声が聞こえた。「やっぱり停電だよ。真っ暗になってる」
 その時だ。智子は部屋の中で何かが動く気配を感じた。それが、だんだん近づいて来る。智子は悲鳴をあげた。それを聞いた紀夫か駆け込んでくる。彼の持つ懐中電灯の灯りで見えたのは、小学生くらいの女の子。智子は一瞬こおりついた。子供がいたなんて…。
 彼は笑みを浮かべて、「どうしたの? しずちゃん」
 女の子はほっとしたような顔で、「真っ暗になっちゃって、それで…」
「そうか。お母さん、まだ帰って来てないんだ。それじゃ、怖かったよね」
 女の子は智子を見て言った。「このおばちゃん、だれ?」
「ああ、このおばちゃんはね」と言って紀夫は慌てて訂正した。「このお姉さんは、智子さんっていうんだよ」紀夫は智子に、「この子は、隣に住んでる子で…」
 女の子はしっかりとした口調で言った。「あたしは、のり君のお嫁さんの静恵(しずえ)です。のり君のこと、誘惑(ゆうわく)しないでください。お・ば・ちゃ・ん」
<つぶやき>思いもよらない展開。もしかすると、この子の母親も彼を狙っているのか?
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2012年11月23日

「約束」

(再公開 2017/05/17)
「誰? そこにいるのは誰なの?」
 私はかすんだ目をこすった。だんだんはっきり見えてくる。そこには、お下げ髪の女の子が立っていた。私のほうを向いて、必死に手を振り何かを叫んでいる。私は、はっとした。それは、紛(まぎ)れもなく私。小学生の私の姿だった。
 そこで、私は目が覚めた。何でこんな夢を見たんだろう。きっと、あれよ。小学校の同窓会のはがきが届いたからだ。私は髪をかきむしった。
 一ヵ月後、私は静岡のとある町に降り立った。もちろん、明日の同窓会に出席するためだ。この町に来たのは十年ぶり。小学五年の時に引っ越して、それ以来一度も訪れたことはなかった。町を歩いていると、何となくその当時の記憶がよみがえってくる。町の様子も、ほとんど変わっていないように思えた。
 駅から少し離れたところにある民宿。確か、ここには同級生の男の子がいたはずだ。私はどんな子だったか思い出そうと、民宿の前でしばらく立ち止まっていた。そこへ突然、
「さゆりちゃん? さゆりちゃんだよな!」
 私は驚いて振り返る。そこに立っていたのは、真っ黒に日焼けした男性。彼は有無も言わさず私の手を取り、力いっぱい握(にぎ)りしめた。
「ほんと久しぶりだよな。俺のこと、覚えてる?」
 民宿に落ち着くと、彼は私のことはお構いなしにまくしたてた。「もう、予約の名前見て、もしかしたらって、思っちゃったよ。で、何しに来たの? まさか、俺に会にとか?」
「何言ってるの。違うわよ」
 私は少し怒った顔で言った。何だか昔に戻ったようだ。この子、お調子もんで、いつも女の子にちょっかい出してたっけ。「同窓会よ。明日、あるんでしょ」
「同窓会?」彼はキョトンとして首をひねった。「そんなの、知らないな」
 私は案内のはがきを出して、「ほら、明日になってるでしょ」
「えっ! 俺だけ除(の)け者かよ」彼ははがきを手に取り見ていたが、突然大声を出して、
「嘘(うそ)だろ、この幹事って――。亡くなってるんだけど」
「えっ、どういうこと?」
「だから、この中村宏(なかむらひろし)だよ。五年前に病気で死んでるんだ。俺、葬式(そうしき)に行ったし」
「やだ…。そうなの? 何で、私のところに…」
 中村宏。私はどんな子だったのか、まったく思い出せなかった。
「ほら、いただろ。体育の授業で、いつも見学してたやつ。けっこう学校も休んでたから、思い出せないのも無理ないけどな」
 私は、彼の言葉でふっと記憶がよみがえってきた。私、中村君と約束したことがあった。何でそんな約束したのか分からないけど…。二人で富士山に登ろうって。中村君から言ってきて。私、いいよって。一緒に登ろうねって。軽い気持ちで約束した。何で中村君、そんなこと言ってきたんだろう。もしかしたら…。私、決めた。富士山に登ろう。私は、お調子もんの彼に手伝ってもらって、富士山頂で同窓会を開くことにした。
<つぶやき>子供の頃、誰かと約束してませんか。今からでも、約束を果たしましょう。
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2012年12月07日

「恋に恋して」

(再公開 2017/05/26)
 好きなのに好きって言えない。とっても簡単な言葉なのに、それを言ってしまうと壊(こわ)れてしまいそうな、そんな気がして…。私は、いつまでもうじうじしていた。
 彼とは友だち。の、はずだった。でも、いつからか意識し始め、気がつけば、彼のことをずっと見ていた。彼は、そんな私のことなんてまったく気づいていないみたい。そんなこと当たり前のこと。私と彼の間には、ものすごく距離があるの。それを縮(ちぢ)めることなんて、今の私にはとても無理だわ。
 私は親友に相談してみた。彼女は、とってもさばさばしていて、思っていることは何でも言ってしまう。私とはまったく真逆(まぎゃく)な性格をしていた。今までもいろんな悩みを聞いてくれたし、私のことをいつも励(はげ)ましてくれていた。
 彼女は私の言うことを黙って聞いてくれて、
「何だ。そんなの、訊いてみればいいじゃない」
「そ、そんなこと訊けないよ。もし、私のこと好きじゃなかったら…」
「それを確かめるんでしょ。でなきゃ、いつまでもスッキリしないままよ」
「そうだけど…。でもね、でも……」
「もう、しょうがないな。あたしが訊いてきてあげる。あんたのこと、どう思ってるのか」
 翌日。彼女は私のところへ来て言った。
「彼ね。他に好きな人がいるんだって。だから、あんたとは付き合えないって」
 私は、何だがホッとしたような…。だって、もし彼と付き合うことになったら、どうしたらいいかまた悩んでしまいそうで。これで、よかったのよ。
 それから一ヵ月後。私は他の友だちが話しているのを聞いてしまった。私の親友と彼が付き合ってるって。私は、自分の耳を疑ってしまった。だって、彼には他に好きな人がいるって――。それって、彼女のことだったの?
 私は確かめようと、彼女に会いに行った。でも、そんなこと訊けないよ。私はまたうじうじうじうじ。結局、何も訊けなかった。それからというもの、私は彼女を避けるようになってしまった。彼女の方も…。
 私は、こんなことで親友をなくすなんて。それもこれも、私のはっきりしない性格のせいよ。私は、いつも他の人に頼ってばっかり。こんなんじゃ、いつまでたっても恋なんてできないわ。自分のことは自分で何とかしなきゃ。でも、そう簡単に自分の性格を変えることなんてできそうにない。
 私は一人でいることが多くなった。今日もひとりでランチ。もう慣(な)れてしまったというか、開き直ったと言ってもいいかも。さあ食べようって思ったとき、私は声をかけられた。
「あの、ここいいですか?」
 顔をあげると、そこには見知らぬ男性。私に微笑みかけている。これって…。
「すいません。ここしか、あいてないものですから」
 何だ。そういうことね。私は、愛想(あいそ)笑いをしてしまう。ああ、私も恋がしたい。もう、うじうじなんてしてられないわ。
<つぶやき>出会いはどこに転がっているか分かりません。チャンスは逃がさないように。
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2012年12月21日

「また明日」

(再公開 2017/06/04)
 三年付き合っていた彼が突然いなくなった。何の前触(まえぶ)れもなく。別れぎわに、また明日って言ってたのに。これって、どういうことよ。あたし…、捨てられたってこと。
 彼と最後に会った日のことは今でも覚えてる。仕事帰りに二人で待ち合わせ。いつものお店で食事して、たわいのない話で盛り上がる。いつもと変わらない、全然、まったく別れ話なんかなかったし、喧嘩(けんか)だってしてないでしょ。なのに、どうして?
 次の日、メールして。返信がなかったけど、仕事が忙しいんだなって思ってた。夜になって電話して。つながらなかったけど、まだ仕事なのかなって…。そういうことって、今までだってあったから。それに、彼って、そういうのマメじゃないし。
 でも、三日たっても連絡がなくて。さすがのあたしも、変だなって思った。それで、彼の会社に電話してみた。そしたら、彼、会社辞(や)めてたの。辞めた理由を訊いてみたら、一身上(いっしんじょう)の都合(つごう)ですって。それって、何よ。まったく分かんない。
 あたし、彼のアパートへ行ってみたわ。そしたら、誰もいなくて。たまたま顔を合わせた隣の人に言われちゃった。二、三日前に引っ越したって。あたし、目の前が真っ暗になったわ。もう、笑うしかないじゃない。あたしは、何度も何度も、彼の携帯に電話した。何度かけたって、電源が入ってないってそればっかし。
 あたし、一人で考えてみたわ。あたしが捨てられた理由。でも、いくら考えたって、そんなの思いつかないわよ。あたしの、何がいけなかったの。いなくなる前に、教えてほしかったわよ。もうダメ。これ以上一人でいたら、あたしどうにかなっちゃう。無性(むしょう)に淋(さび)しくて、叫びたくなるくらい腹が立った。
 あたしは友だちに電話した。誰かに聞いてもらわないと、あたしおかしくなりそう。友だちは慰(なぐさ)めてくれたわ。そんな身勝手(みがって)な男のことなんか忘れなさいって。別れて正解だったのよ。ほんと、そうかもしれない。でも、でもね。あたしもそうしようと思ったわよ。思ったけど、どうしても心のどっかに彼のことが引っかかってるの。このままじゃ、あたし前へ進めない。仕事も手につかないし。
 今、あたしは彼の実家へ向かっている。興信所(こうしんじょ)で調べてもらったの、彼のことを。そしたら、彼の居場所(いばしょ)が見つかったわ。一ヵ月ぶりの再会。彼には、言いたいことが山ほどある。でも、その前に一発ぶん殴(なぐ)ってやる。それくらいのこと、許されるはずよ。
 地図を見ながらあたしは歩く。――何なのここは。畑ばっかりで、家なんでどこにあるのよ。道を訊こうにも、人なんかまったく歩いてないじゃない。彼が、こんな田舎で育ったなんて、まったく知らなかった。あたし、彼のことどこまで知ってたんだろう。
 遠くの畑で働いている人影を見つけた。あたしは、その人の方へ歩いて行く。これでやっと道を訊くことができるわ。だんだん近づくにつれて、あたしはハッとした。その人の背格好(せかっこう)、身体つき…。そして、帽子の下で見え隠れする顔。あたしは足を止めた。それは、間違いなく彼だった。あたし、身体が震えたわ。頭へ血がカーッとのぼって…。
 あたしはゆっくりと彼に近づく。あたしを見つけた彼の顔は、ハトみたいに口を開けちゃって。あんなに言いたいことがあったのに、あたし何も言えなくなっちゃった。
<つぶやき>人生は出会いと別れの連続です。悔いのないように、一期一会(いちごいちえ)で生きましょ。
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2013年01月04日

「十分後」

 彼女が会社のデスクで仕事をしているとき、自分のスマホにメールが届(とど)いた。何気(なにげ)なく開いてみると、そこには短い文章(ぶんしょう)で次のことが書かれていた。
〈あなたは転(ころ)びます。お気をつけ下さい〉
 彼女は首(くび)をかしげて呟(つぶや)いた。「誰(だれ)よ、こんなこと…、何のつもり?」
 送信先のアドレスはまったく見覚(みおぼ)えがなく、誰から送信されたのか見当(けんとう)もつかなかった。彼女は、間違いメールか誰かの悪戯(いたずら)だわ、と無視(むし)することにした。そのまま仕事を続ける彼女。出来た書類を係長(かかりちょう)に見てもらおうと、彼女は席を立って上司(じょうし)のもとへ――。
 それは、席を立って数歩(すうほ)あるいたときだった。彼女は何かにつまずいてバランスを崩(くず)した。次の瞬間(しゅんかん)、手にした書類が宙(ちゅう)を飛び、彼女は床(ゆか)に倒れ込んだ。幸(さいわ)いなことに、ど派手(はで)に倒れたわりには、膝(ひざ)にあざを作った程度(ていど)で事なきを得(え)た。
 昼休み、同僚(どうりょう)の女子たちと外食に出ると、彼女の転(こ)けた話で持ち切りになった。彼女は気恥(きは)ずかしさもあり一緒(いっしょ)に笑っていたが、メールのことは口にしなかった。
 お店を出たとき、彼女にメールが届いた。彼女はさり気なくメールを見た。そこには、
〈エレベーターが故障(こしょう)します。乗らないで下さい〉とあった。
 彼女は心の中で呟いた。「もう、何なのよ。どこから送られてくるの?」
 彼女が勤(つと)めている会社はビルの七階にある。当然、エレベーターを利用することになる。ビルに入った彼女たちは、何時(いつ)ものようにエレベーターの前に立った。彼女は思った。
「まさか、そんなことあるはずないわ。今まで故障したことなんか…」
 エレベーターの扉(とびら)が開いた。同僚たちは次々に乗り込んで行く。彼女は、一瞬(いっしゅん)迷ったが、後に続いた。扉が閉まるとエレベーターは動き出した。彼女たち以外に乗った人はなく、エレベーターは七階まで止まることなく昇(のぼ)って行った。
 それは、四階まで来たときだった。エレベーターが突然ガタッと止まってしまった。どうやら故障したようだ。同僚たちは慌てて非常用のインターホンを押したり、大騒(おおさわ)ぎになった。彼女だけは、蒼(あお)い顔をして手にしたスマホを覗(のぞ)き込んで呟いた。「そんな…、何で?」
 彼女は、あることに気がついた。エレベーターが故障したのは、メールが届いて十分後だった。その前の転んだときも、確かそのくらいのはず…。もしかして、このメールは十分後に起きることを教えてくれているの?
 ――彼女たちは一時間後に無事救出(ぶじきゅうしゅつ)された。会社に戻った彼女たちは、他の社員から拍手(はくしゅ)で迎(むか)えられた。ちょっとした有名人にでもなったみたいに。彼女だけは、疲れ切った顔で自分の席にどっと座り込んだ。
 退社(たいしゃ)時間になると、彼女にまたメールが届いた。彼女は震(ふる)える手でメールを見た。
〈あなたは運命(うんめい)の人と出会います。おめでとうございます〉
 彼女は頭の中が真っ白になった。これは、どういうことなのか?
 彼女は回りを見回して、誰にも気づかれないように呟いた。
「運命の人って…。えっ、そうなの…。それって…、ええっ…!」
 彼女は慌てて身支度(みじたく)を調(ととの)えると、ぎこちない足どりで会社を出て行った。ブツブツと口の中でこう呟きながら。「十分後…、十分後…、運命の人…、運命の人…」
<つぶやき>彼女は運命の人に出会えたのでしょうか? でも誰からのメールだったの?
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2016年12月01日

「禁断の場所」

 町外れに、大きくて立派(りっぱ)な屋敷(やしき)が建っていた。だが手入れをしていないようで、柵(さく)が壊れていたり、屋敷の雨よけの戸が外(はず)れかけていたり、広い庭園(ていえん)も雑草がはびこっていた。まるで廃墟(はいきょ)のようで、人が住んでいるようには見えなかった。
 この屋敷を外から覗(のぞ)いている姉妹(しまい)がいた。姉が妹の手を引っ張って、
「もう帰りましょ。こんなところに住んでる人なんかいないわよ」
 妹は動こうとせずに答えた。「あたし見たのよ。昨日の夕方、明かりが点いてたわ」
「見間違(みまちが)いよ。ここからじゃ、草が邪魔(じゃま)をして家の窓(まど)なんか見えないじゃない」
「ほんとに見たの。こっちよ、柵が壊れているところがあるの」
 妹は、今度は逆(ぎゃく)に姉の手を引っぱって駆(か)け出した。――妹が言う通り、柵が壊れていて子供が入れる隙間(すきま)があった。妹はするりとそこを抜(ぬ)けて中へ入る。姉はためらって、
「ダメよ、勝手(かって)に入ったら怒(おこ)られるわよ。戻って来なさい」
「心配(しんぱい)ないわよ。人なんか住んでないんでしょ? あたしひとりで行ってくるわ」
 妹は屋敷の方へ歩き出した。姉は、ほっとくわけにもいかず、隙間を何とかくぐり抜けて妹の後を追いかけた。――草をかき分けてしばらく行くと、開けた場所に出た。目の前に、大きな屋敷が飛び込んで来た。二人は顔を見合わせて、屋敷の壁際(かべぎわ)まで駆け出した。そして、壁づたいに一つ一つの窓から中を覗いて見る。人の気配(けはい)はなかったが、でも思ったより部屋の中は整然(せいぜん)としていた。玄関までたどり着くと、姉は呼鈴(よびりん)を探してみた。でも妹の方は、玄関の扉(とびら)に手をかけた。扉は鈍(にぶ)い音を立てて動き出す。姉は驚いて声をあげた。
「何してるのよ。もし誰か住んでたらどうするの」
 妹は唇(くちびる)に人差し指をあてて静かにするように合図(あいず)をすると、扉から頭を突っ込んで家の中を覗いて見た。屋敷は中世の洋館という感じで、がらんとしていて骨董品(こっとうひん)らしきものがあちこちに飾られていた。耳を澄(す)ましていると、どこからか低く唸(うな)るような音がかすかに聞こえてきた。妹は思わず屋敷の中へ――。二人は音のする方へ歩き出した。
 ――その部屋には、複雑に組み立てられた機械(きかい)が並んでいた。色とりどりのランプが点滅し、火花を散らしながら、まるで呼吸(こきゅう)をしているように音を立てていた。
「さあ、やっと完成(かんせい)だ。今までさんざんわしをバカにしてきた連中に、吠(ほ)え面(ずら)をかかせてやる。わしの考えが正しかったことを見せつけてやるんだ」
 白髪(しらが)まじりの頭で、白衣(はくい)を着ている男が高笑いをした。その様子(ようす)を廊下(ろうか)の窓から覗いているのは、あの姉妹だ。男は機械を愛(いと)おしそうに触(ふ)れながら呟(つぶや)いた。
「さあ、始めよう。お前がいてくれて本当に助かったよ。電球(でんきゅう)を替(か)えるときに梯子(はしご)から落ちるなんて、まったくドジな話しだが…。おかげで、わしの研究(けんきゅう)を完成させることができる。最後の最後まで、わしのために…。さあ、わしがお前に命(いのち)を吹(ふ)き込んでやる」
 その時、姉妹が悲鳴(ひめい)をあげた。機械の中に人の姿を見つけたのだ。いくつものコードで機械につながれていた。悲鳴を聞いて、男は侵入者(しんにゅうしゃ)に気がついて叫(さけ)んだ。
「誰だ! 出て来い! ここから逃(に)げられると思うなよ。実験台(じっけんだい)にしてやる」
 姉妹は恐怖(きょうふ)に駆られて走り出した。玄関から外へ逃げようとしたが、どういうわけか扉はびくともしなかった。足音が静かに、だが確実(かくじつ)に二人に近づいて来ていた。
<つぶやき>二人は逃げることが出来るのでしょうか? きっと逃げ道はあるはずです。
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2017年01月22日

「明日の私」

 私には、もう一人、〈明日(あした)の私〉がいる。朝になると私を起こしてくれて、今日の忠告(ちゅうこく)をしてくれる。そのおかげかどうか、今まで何事(なにごと)もなく過(す)ごしてこられた。
 でも、何時(いつ)からか私は〈明日の私〉に疑念(ぎねん)を抱(いだ)くようになってしまった。本当にその忠告は正しいのか…。もしかしたら、別の選択(せんたく)があるのではないか…。その気持ちは私の中でだんだん大きく膨(ふく)らみ、自分でもどうすることも出来なくなった。
 そんな時だ。〈明日の私〉がこんな忠告をしてくれた。
「今日は、仕事が終わったら真っすぐ帰るのよ。寄(よ)り道なんかしちゃダメだからね」
 でも、今日は恋人(こいびと)から食事に誘(さそ)われていた。何か大事(だいじ)な話があるって。もしかしたらプロポーズかも…。だから、忠告に従(したが)うことなんてあり得(え)ない。
 ――私は、初めて忠告に逆(さか)らった。仕事が終わると、何時もの待ち合わせの場所へ向かった。人混(ひとご)みの中、私は恋人の姿(すがた)を見つけると小走(こばし)りで彼に近づいた。彼も私を見つけて手を上げた。その直後(ちょくご)、私は彼の後に人影(ひとかげ)を見た。それも、私の知ってる女性――。
 これ、どういうこと? 何で彼女がここに…。私は彼を問い詰(つ)めようとしたが、その前に彼が口を開いた。
「ごめん。今日は、もう一人いるんだ。一緒(いっしょ)に話がしたくて。どこか、入ろうか?」
 私が言葉(ことば)につまっていると、その、もう一人の彼女が口を出した。
「先輩(せんぱい)、ごめんなさいね。あたしは、来たくなかったんだけど、彼がどうしてもって言うから…。もし、先輩がイヤだったら、あたし、ここで待っててもいいのよ」
 この状況(じょうきょう)で…、いくら鈍感(どんかん)な私でも理解(りかい)できた。こいつ、二股(ふたまた)をかけてたのか! 何時からだ? この後輩(こうはい)を彼に紹介(しょうかい)したのは一ヶ月くらい前だから…。ああ、もう!!
 私は彼を睨(にら)みつけた。彼は、私と目を合わせようともしないで言った。
「そういうことで…。君とは、別(わか)れたいんだ。こんなことになって、ほんとごめん。でも、君とはこれからも――」
 私は、思いっ切り彼を引っぱたいていた。そして、彼に背を向けて私は駆(か)け出した。どこをどう歩いたのか、気がついたときには自分の家に戻っていた。――私は後悔(こうかい)していた。何で忠告に従わなかったんだろう。もし、彼に会いに行かなかったら、こんなことになんかならなかったはずなのに…。私は、いつの間にか眠(ねむ)ってしまったようだ。
 翌日、〈明日の私〉は起こしに来てくれなかった。遅刻(ちこく)ぎりぎりで会社に着いた私は、仕事に没頭(ぼっとう)した。そうしないと、イヤなことがどんどん頭の中に浮(う)かんできて、どうにかなってしまいそうだった。
 会社から帰ると、もうクタクタだった。泥(どろ)のように、このまま眠ってしまいたかった。私はベッドにもぐり込むと、目を閉じた。――でも、すぐに私は誰かに揺(ゆ)り起こされた。目を開けると、そこにはもう一人の自分がいた。私は思わず飛び起きて言った。
「ごめんなさい、私が悪かったわ。だから、もう一度――」
 もう一人の自分は、私の頭をなでならが呟(つぶや)いた。「私は、昨日(きのう)のあなたよ。何で、あんな後輩を彼に会わせたのよ。だから、別れることになっちゃったのよ」
<つぶやき>明日の私と昨日の私。あなただったら、どちらの言葉を聞いてみたいですか?
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2017年05月20日

「幽霊女子」

 彼女は幽霊(ゆうれい)。なぜ幽霊になっちゃったのか、彼女にもよく分からない。でも…、何か未練(みれん)でもあったのだろう。――そんな彼女が恋(こい)をした。まさに、初恋(はつこい)である。彼との出会いに、彼女は運命(うんめい)を感じてしまった。幽霊が運命を感じるなんて、変かも知れないけど…。
 ――彼女が、しょんぼりと公園(こうえん)のベンチに座(すわ)っていると、彼の方から声をかけて来た。幽霊になって初めてだ、こんなこと…。彼女は思わず訊(き)いてしまった。
「あたしが、見えるんですか?」
 彼は、ごく普通(ふつう)に、まるで友だちにでも話すように、「ごめんね、何か大丈夫(だいじょうぶ)かなって…。ほら、同じ学校みたいだからさ。迷惑(めいわく)だったかな?」
 彼女は、なぜかセーラー服を着ていた。若(わか)くして、高校生のときに亡(な)くなったのかもしれない。同じ高校の生徒(せいと)だったのだろう。
 そこへ、同じ制服(せいふく)を着た女子がやって来て、彼に声をかけた。どうやら、友だちなのか、それとも、もっと親(した)しい――。彼女に、嫉妬(しっと)という気持ちが生まれた。彼女は、その女の子を睨(にら)みつけた。すると、突然(とつぜん)突風(とっぷう)が吹(ふ)き荒(あ)れて、女の子のスカートをめくりあげた。
 それからというもの、彼女は彼に取り憑(つ)くことにした。取り憑くといっても、悪(わる)さをするとか、不幸(ふこう)にさせるとか、そういうことじゃないからね。彼女は、彼が一人になるのを見計(みはか)らって、彼の前に現れた。もちろん、ごくさり気なく、偶然(ぐうぜん)を装(よそお)って…。
 彼は、彼女を見つけると嬉(うれ)しそうに微笑(ほほえ)んだ。――何度か会って話をしてみて、彼女はますます彼のことを好きになってしまった。どうやら、付き合っている彼女はいないようだ。ここは、ちゃんと告白(こくはく)して…。でも、彼女はふと考えた。
「幽霊のあたしが、人間に告白するのって、いいのかな? あたしなんかが――」
 彼女は、告白をためらってしまった。そんな、うじうじとしているとき、最強(さいきょう)のライバルが転校(てんこう)してきた。その、人間の女子は、彼に猛(もう)アタックをかけてきた。彼に一人になる隙(すき)をあたえないのだ。まるで、幽霊の彼女のことを気づいているみたいに。
 彼女はあせった。このままだと、彼に会うことができなくなってしまう。彼女は、何度も、何度も、その機会(きかい)をうかがったが、いつも邪魔(じゃま)されて――。とうとう、最悪(さいあく)の事態(じたい)を迎(むか)えることになった。それは、あの人間の女子が告白すると公言(こうげん)したのだ。
 もう、うじうじしている場合ではなくなった。あんな女子に彼を取られるなんて…。こうなったら、取り殺すしか――。いや、彼女はそんな野蛮(やばん)な幽霊ではなかった。
 ――人間女子が彼を呼び出した。彼女は二人の様子(ようす)を物陰(ものかげ)からうかがった。まさに、女子が彼を見つめて告白しようとした瞬間(しゅんかん)――。彼女は飛び出した。女子を押(お)しのけると、
「あなたのことが好きです。あたしと、付き合って下さい」
 まさに、どんでん返(がえ)し! 驚(おどろ)いたのはその人間女子で、見たことのない女子が現れて横取(よこど)りされてしまったのだ。まあ、幽霊なんで見えるわけもないのだが…。
 さらに、彼の返事(へんじ)は衝撃的(しょうげきてき)だった。「やっと現(あらわ)れてくれたね。ずっと待(ま)ってたんだよ。でも、ずるいなぁ。僕の方から告白するつもりだったのに」
 彼女は、彼のこの言葉(ことば)で天(てん)にも昇(のぼ)る心地(ここち)になってしまって、あやうく成仏(じょうぶつ)しそうになってしまった。この後、二人は…。いや、人間女子の反撃が始まるかも――。
<つぶやき>恋のバトルの始まりですね。さて、どっちが彼を射止(いと)めることになるのか…。
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2017年07月04日

「彼女の事情」

 僕(ぼく)は近くの神社(じんじゃ)のお祭(まつ)りに来ていた。家族(かぞく)連れが多いのだが、若いカップルがやたらに目についた。僕だって、彼女と一緒(いっしょ)に来るはずだった。昨日(きのう)、別れようって言われなければ…。失恋(しつれん)の痛手(いたで)は、思いのほか大きかった。今も、人混(ひとご)みの中に彼女の姿(すがた)を探している。
 ――神社の参道(さんどう)からちょっと脇(わき)に入ったところ。その夜店(よみせ)は、薄暗(うすぐら)い人目(ひとめ)につかない場所にあった。夜店というにはほど遠い、段ボール箱と小さな旗(はた)のようなものが立っているだけ。そこに、僕は人影(ひとかげ)を見た。どうやら若い女性のようだ。その人は僕が見ているのが分かったようで、にっこり微笑(ほほえ)むと(薄暗いのでほんとに微笑んでいたのかははっきりしないが)、僕を手招(てまね)きした。よせばいいのに、僕は人恋(ひとこい)しかったからか、ふらふらと彼女の方へ行ってしまった。
 彼女は、涙(なみだ)ながらに僕に訴(うった)えた。
「これを、売(う)って帰らないと、家では幼(おさな)い妹(いもうと)と弟(おとうと)が――」
 後で考えればおかしな話しだ。たった五百円のものを売って、それで生活のたしになるとも思えない。彼女が段ボール箱から出したものは、黒くて丸いもの…。ちょうどピンポン玉くらいの大きさだった。それが彼女の両手の上で、ころころと動き回った。
 彼女は愛(いと)おしそうに言った。「妖獣(ようじゅう)のまる君(くん)よ。育(そだ)て方はそんなにむずかしくないわ。たまに手の上にのせてあげるだけでいいの。餌(えさ)をあげる必要(ひつよう)はないし、フンとかもしないから衛生的(えいせいてき)よ」
 僕は、なぜだかよく分からないが、それを買ってしまった。もう、明らかに怪(あや)しいはずなのに――。普通(ふつう)に考えたら、手は出さないでしょ。それを…、僕は…白状(はくじょう)するが、彼女の愛(あい)くるしい姿にやられてしまったのかもしれない…。
 ――あれから一週間、その黒い物体(ぶったい)は成長(せいちょう)していた。今では、直径(ちょっけい)1メートルを超(こ)えて、かなり邪魔(じゃま)な存在(そんざい)になってしまった。もう、僕の狭(せま)い部屋では無理(むり)。そこで、彼女に引き取ってもらおうと思った。でも、どこに住んでいるのか分からない。僕は、彼女と出会った神社へ行ってみることにした。
 彼女はそこにいた。僕が事情(じじょう)を説明(せつめい)すると、彼女は嬉(うれ)しそうに答えて、
「それはすごいわ。そんなに環境(かんきょう)がよかったのね。普通はそこまで大きくならないのよ」
 二人で部屋に戻(もど)ると、とんでもないことになっていた。部屋中に、まる君が散(ち)らばっていたのだ。足の踏(ふ)み場もないくらい。彼女は目を丸くして言った。
「わぁ、産(う)まれちゃったのね。すごい、こんなに沢山(たくさん)のまる君を見たのは初めてだわ」
 唖然(あぜん)としている僕を見て彼女は続けた。
「心配(しんぱい)しないで。窓(まど)を開けてあげれば、風(かぜ)に乗って飛んで行っちゃうから」
 彼女の言う通り、窓を開けると吸(す)い出されるように次々(つぎつぎ)に飛び出して行った。最後の一匹が出て行くと、彼女はもじもじしながら、「あの、お願いがあるんだけど…。この部屋、貸(か)してくれない? ここで、繁殖(はんしょく)をさせたいの。実(じつ)はね、まる君を見つけるのって、とっても大変(たいへん)なのよ。一日中探(さが)し回っても見つからないときもあって。お礼(れい)は、売上(うりあげ)の三割(わり)…、いや五割でもいいわ。お願い! もちろん、あたしの寝(ね)る場所は、どこか部屋の隅(すみ)でいいのよ。あなたの生活の邪魔にならないようにするから。ねぇ、いいでしょ?」
<つぶやき>これは、もしかして同居(どうきょ)するってことなの? 彼女はいったい何者なのか?
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2017年08月19日